善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

たそがれの女心

銀座のメゾンエルメス10階にある「ル・ステュディオ」という小さな映画館でフランス・イタリア映画の「たそがれの女心」を観る。
40席しかないエルメスのプライベートシネマで、1年を通したテーマにそった映画を月1のペースで上映している。
2017年のテーマは「オブジェに宿るもの」。
そこで8月はダイヤのイヤリングを巡る運命のいたずらを描いた「たそがれの女心」。
1953年のモノクロ映画。
監督はマックス・オフュルス。出演はダニエル・ダリューシャルル・ボワイエヴィットリオ・デ・シーカほか。

20世紀初頭のパリが舞台。上流階級の華やかな社交界にひときわ輝く貴婦人が主人公。しかし、華やかさの陰で彼女の心は屈折していた。将軍である夫は浮気し、自分も外交官の男にひかれるが、それは成さぬ恋であった。結局彼女は将軍のいうままになるほかなかったからだ。

「マダム・ド…」という原題がこの映画のメッセージでもあると感じた。
映画では終始、主人公の貴婦人ルイーズの姓は明かされない。
彼女の姓が書かれていると思われる部分が画面にあらわれるとナプキンが被さっていて見えなかったり、姓を聞かれても馬車の音で聞こえなかったりする。
結局、彼女は姓のない、将軍の付属物である「マダム」でしかない。

イプセンの「人形の家」では、ノラは「一人の人間」としての意思を持ち、家を出るが、この映画では悲しみに暮れて終わる。

美しい映像、カメラワーク、フランス語の美しさ。
映画でよく出てきた言葉。「ケスクセ」(これは何?)。

何より3人の役者がいい。
ルイーズ役のダニエル・ダリューはいかにもフランスを代表する古典派美人という感じだったが、ヴィットリオ・デ・シーカの渋い演技に目を見張った。
自転車泥棒」「ひまわり」などの名作の監督として知られるが、俳優でもあったなんて知らなかった。

写真の左端がヴィットリオ・デ・シーカ、その右がダニエル・ダリュー
向こうを向いちゃってるが。
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