善福寺公園めぐり

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ジャコメッティ展 見えるままに

六本木の国立新美術館でアルベルト・ジャコメッティ(1901~1966)の大回顧展を見る。
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スイスに生まれ、パリで活動したジャコメッティは「見えるものを見えるままに」表現することを追求したという。
針のように細い形と凸凹の表現が彼の特徴。
しかし「見えるままに」というのは「写実」とは違うのか?
ジャコメッティの目には人間は針のように細長く見えるのだろうか?

ジャコメッティのいう「見えるまま」というのは、写真のようにそっくり描くという意味ではないのだろう。
対象を見るとき、思考を通して見ている。その思考の中で見えているものを、ジャコメッティは描きたかったのだろうか。

彼ははじめのころは写実的に人間を描いていた。18歳のときに描いた弟の肖像などはまあ写実的だ。
しかし、そのころから彼は「見えるままに」表現するにはどうしたらいいかの模索をはじめる。
1930年代半ばまで、キュービスムやシュールレアリスムの手法で彫刻を制作するが、やがてそれとも違う道を探すようになる。
今回の展覧会を見ていて、彼の作品が大きく変わったのは「女=スプーン」(1926/ 27年)というブロンズの作品をつくってからではないかと思った。
スプーンのような大きなおなかと1本の足、そしていささか変わった頭の作品。
彼は1923年から1924年にかけての冬、パリで開催されたアフリカ美術とオセアニア美術の展覧会を訪れており、このとき目にしたアフリカ・コートジボワールのダン族が用いる擬人化されたスプーンにインスピレーションを得たといわれる。
その擬人化されたスプーンは呪術的な意味合いを込め、豊満な女性の姿に作物が豊かに実る豊穣を重ね合わせたものだった。
「これこそ見えるままのものだ!」とジャコメッティは確信したに違いない。
それは、彼がまだ20代半ばのことだった。

どの作品もすばらしいが、中でも目を引いたのがチェース・マンハッタン銀行の依頼で1960年に制作された大作「歩く男Ⅰ」「大きな女性立像Ⅱ」「大きな頭部」の3作だろう。

この3作品は撮影OKなので以下で紹介。(最近の日本の美術館も、ヨーロッパ並みに他人の迷惑にならない限り、一部だけだが撮影OKの流れになっていて、喜ばしい)

歩く男Ⅰ
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大きな女性立像Ⅱ
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大きな頭部
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これらの作品は、同銀行の広場に展示するために制作されたが、結局ジャコメッティのイメージが合わず広場での展示は中止になったという。
その結果、室内で見ることになったのがむしろ幸いしたのか、壮大なスケールを感じる。
そして、彼がめざした彫刻の本質も垣間見ることができる。
たとえば「歩く男Ⅰ」。まさに針金のように細く、人間のもろさ、危うさを感じさせる。だが、同時に、そのもろさの中から生命力というか力強さが伝わってくるのだ。
弱くて、もろくて、力強く、躍動している。そんな人間の本質というか運命に彼は迫ろうとしたのだろう。

帰りは龍土町美術館通り沿いにある「中国名彩 孫 六本木店」で昼食。
2人で行ったので、ランチメニューの中から2種類の麺料理をチョイス。シェアして食べたので2人分の満足度でした。

海老と卵、トマトの冷麺
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ゴーヤと豚肉の辛温麺
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