善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

東博 運慶展

東京国立博物館で開催中の「運慶展」を見に行く。(11月26日まで)
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運慶(?-1223)は平安末期から鎌倉時代に活躍した仏師。生涯に多くの仏像を造ったものの現存する運慶作の仏像は31体といわれる。そのうち22体が出展されるというから運慶を観る絶好のチャンス。
また、運慶の父・康慶、息子などの作品も展示され、約70体の作品のほとんどが国宝か重要文化財で、まさに“史上最大の運慶展”。
運慶は、まるで生きているかのような写実性と精神的に深みのある作品で知られるが、無著菩薩立像、世親菩薩立像などはその極地といえよう。

その無著、世親の菩薩立像と、最近の分析から運慶作ではないかといわれる四天王立像が置かれている部屋に入ったときだ。(いずれも国宝で、ともに奈良・興福寺に安置されている)
なぜかふと6月にイタリアを旅したとき、フィレンツェにあるメディチ家礼拝堂のミケランジェロの作品が置かれた部屋を思い出した。
やがてその理由がわかった。
ミケランジェロの作品も運慶の作品も、その写実性、精神性においてとても似たところがあるのだ。
ミケランジェロの作品が置かれた場所はミケランジェロ自身の設計と装飾による「神聖具室」という霊廟で、ここにはメディチ家の歴代当主の2つの墓碑が向かい合っており、擬人化された「夜」と「昼」の像と、「曙」と「黄昏」の擬人像が横たわり、両者の間の壁面には聖母子像があるが、そのどれもが息をのむほどすばらしい。

そのミケランジェロの作品と運慶の作品とがダブッて見えてきて、「ミケランジェロと運慶は同じだ!」と心の中で叫んだのだった。

運慶展は平成館が開かれていたが、本館14室で「運慶の後継者たち―康円と善派を中心に」と題する展示があり、同じチケットで見られるのでそちらものぞいてみる。
運慶展は撮影禁止だが、こちらはOKなのでカメラを構える。

運慶の孫、康円(1207~?)の「善財童子立像」。合掌して文殊菩薩を見上げる童子の像。あどけなさの中にもキリリとした感じ。運慶の写実性が受け継がれている。
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やはり康円作の于闐王(うてんのう)立像。
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善財童子と同じく文殊菩薩の従者の一人。于闐王とは西域にあったホータン国の王を指すが、もともとは獅子や童子と一揃いであらわされた異国風の人物に由来するという。現代にもいそうな顔をしている。

文殊菩薩立像。康円と同じ頃に活躍した仏師、善円(1197~1258)の作品。
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頭に5個の髷があり、少年のような姿にあらわされている。目尻を上げた涼やかな顔立ちだ。

ところで本館に入って運慶の後継者の作品の展示がある14室に行く途中に刀剣の部屋があるが、1カ所だけ長蛇の列ができていて、並んでいるのは若い女性ばかりだった。
今月15日まで、実在の刀剣を擬人化したオンラインゲーム「刀剣乱舞」に登場する「三日月宗近」(国宝)が展示されていて、写真も撮れるので、“刀剣女子”がワンサカ集まっていたのだった。
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仏像を堪能して東博を出たときにはもう日が暮れていた。