善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

だまし絵教会 北イタリアの旅③

ミラノ2日目の午後はプラザ財団で現代アートをみたあと、地下鉄でドゥーモに戻り、ドゥオーモ近くのサンタ・マリアプレッソ・サンサティロ教会に行く予定。
ところが、ここで“事件”発生!
プラザ財団の最寄り駅ロディT.I.B.Bから地下鉄に乗って4つ目のドゥオーモ駅で降りようとしたら、なんと電車はドゥオーモで止まらず通過していくではないか。
しかし、乗ってる客は平然としてスマシ顔。一体どうなっているの?
ほかの客はみんなこの日の地下鉄はドゥオーモに止まらないのを知っていたらしい。その証拠にドゥオーモの1つ手前のミッソーリでどっと降りていった。

あとでわかったことだが、この日は毎年5月にイタリア全土を舞台に行われる自転車のプロロードレース「ジロ・デ・イタリア(Giro d'Italia)」の最終日で、なんとゴールはミラノのドゥオーモ広場だった。しかも今年は100回記念だそうで、イタリア全土から自転車ファンがどっと押し寄せてきていたのだろう。
このため広場周辺は大規模な交通規制が行われ、地下鉄の駅まで閉鎖となったようだ。
しかし、いきなりやってきた旅行者はそんなことは知らない。
「そういえばきのうガレリアを通ったら『あと0日22時間何分』とかいう表示があったな。あれは自転車レースのゴールまで残り時間をさしていたのか」と納得してもあとの祭り。
おかげで1駅先のモンテナポリオーネで降りるハメとなり、そこからエンエンと歩かされる。

サンタ・マリアプレッソ・サンサティロ教会は別名“だまし絵教会”ともいわれている。
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教会の外観は巨大なドゥオーモと比べるととても質素だが、中に入るとなかなか絢爛豪華。特に奥の祭壇は奥行きがあって立派だ。
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ところが、近寄って横から見ると祭壇の幅は1mもない。遠近法の技法を巧みに使って奥行きを演出しているのだった。見事な錯覚の効果というべきか。
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この教会は15世紀につくられたというから、そのころから“遊び心”があったのか。それとも、狭い敷地でも大きく見せたい切なる願望の産物か。
そういえば、壁にかかっていた宗教画も、エライ聖人が天使たちと踊っているようで、どこかユーモラスだ。
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夜はいよいよスカラ座へ。
演目はモーツアルト作曲の「ドン・ジョバンニ」。
開演は夜8時なのでその前に腹ごしらえ。
劇場に行く途中で見つけたピザの店で食事。
なかなかおいしかった。
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席は日本で予約しておいたが、1階の平土間席なのでスーツ着用は必須、というのでネクタイを締めて出かけていく。たしかにその通りで、桟敷席はどうだったか知らないが、まわりはみんな着飾っていて、ラフな格好は皆無。あーよかった。
中の様子。オジサマ、オバサマが多い。
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指揮はパーヴォ・ヤルヴィー。主な出演歌手は、ドン・ジョバンニにトーマス・ハンプソン、騎士長にトマス・コニエチュニー、ドンナ・アンナにハンナ=エリーザベト・ミュラー、ヤポレロにルカ・ピサローニなど。
ハンプソンはドン・ジョバンニ歌いとして世界で5本の指に数えられる人だとか。
また、指揮者のヤルヴィーは今年9月に日本にやって来る予定で、「ドン・ジョバンニ」を演奏会形式で指揮するそうだ。

序曲が始まる。
すでに幕は下りていて、舞台袖のバルコニー席からネクタイ姿の若い男が飛び出してきて舞台が始まる。どうやら17世紀のスペインの話を現代劇にアレンジしたようだ。
その若い男とはドン・ジョバンニの従者のレポレロ。彼が幕を引っ張ると、歌舞伎の浅葱幕みたいに振り落とされる。すると巨大な鏡の背景があらわれ、出演者も客席もそこに映し出される仕掛け。かつて蜷川幸雄が「十二夜」のときに使った手法を彷彿させる。そして再び幕が下ろされ、その前で物語は続く。
結局、舞台装置は終始「幕」であり、なかなか効果的に使われていた。

ドン・ジョバンニを演じたトーマス・ハンプソンのバリトンもすばらしかったが、ドンナ・アンナ役のソプラノ歌手、ハンナ=エリーザベト・ミュラーの声がひときわ美しかった。
また、ドン・ジョバンニが女性歌手2人と舞台から降りて観客席のすぐ前で歌った三重唱にはうっとりと聞きほれた。

終わったのは12時近く。オペラが始まったころは外は明るかったが、さすがにとっぷり日が暮れていた。
ライトアップされたスカラ座
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夜中でもガレリアはにぎわっていた。
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宿はスカラ座から歩いて15分ほど。スキップしながら引き上げた。