T・ジョイSEIBU大泉で韓国映画「パラサイト 半地下の家族」を観る。
監督は「殺人の追憶」のポン・ジュノ、出演はソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、チャン・へジンほか。
原題は韓国語で「寄生虫」という意味らしい。
最初に感想をいってしまえば、とてもよかった!必見の映画!
映画のあらすじは――。
父ギテク(ソン・ガンホ)、母チュンスク(チャン・ヘジン)、息子ギウ(チェ・ウシク)、娘ギジョン(パク・ソダム)のキム家の4人は、狭く薄汚れた半地下のアパートに住んでいた。全員失業中で、ギテクはチキン屋やカステラ屋を営んでいたが店は潰れて職を転々。長男のギウと長女のギジョンは大学入試に失敗し続けて浪人中。ギテクの妻チュンスクも元ハンマー投げのメダリストだったがそんな栄光も何の役にも立っていない。
あるときギウは、彼の友人で名門大学に通う青年から、高台の大豪邸に暮らすIT企業のパク社長(イ・ソンギュン)の高校生の娘の家庭教師をやらないかと誘われる。始めは浪人中だから教える資格がないとためらったものの、高い報酬のこともあり家庭教師を引き受けることにする。
これに味をしめた一家は策略を練る。長女のギジョンは社長の息子の絵の先生に、父ギテクは社長の車の運転手に、妻チュンスクは家政婦にと次々とパク家に入り込み、ついには家族全員がパク家にパラサイト(寄生)していく。
半地下暮らしは韓国では貧困層にけっこう普通にあるらしい。もともと北朝鮮との対立が深刻になる中で、いっとき韓国政府は住宅建築の際に地下層の設置を義務化したことがあったという。有事の際の避難場所として使うためだ。
高度成長期にソウルへの人口流入が激しくなり、避難場所だった地下層が住居として貸し出されるようになったという。韓国政府も住宅法を一部改正して、半分は地上にまたがる「半地下住居」が合法化されるようになった。
現在、約80万人の人々が半地下で暮らしているといわれ、半地下は貧困の象徴のようにいわれているそうだ。
一方、ギテクの家族がパラサイトするパク一家は、韓国の1%にしかすぎない超富裕層。
半地下のアパートと丘の上の大豪邸は、格差社会の現実を見事に対比させている。
映画を見ながら一瞬、黒澤明監督の『天国と地獄』が頭をよぎったが、あの映画で三船敏郎が演じる丘の上の金持ちは、貧しいところから這い上がった苦労人であり、人情家でもあり、格差社会への矛先は弱められている。
格差社会の現実と真正面から「格闘」しているのが本作。何しろ、映画のキーワードとなっているのは、貧困層が発する「臭い」なのだ(映画を見終わって外に出て、思わず自分の臭いをかいでしまったほど)。
とんでもない設定なんだけど、計算されつくしていて違和感はまったくない。伏線もいろいろあってドラマチック。どんでん返しもさえている。
脚本がしっかりしているからだろう。
ブラックユーモアが随所にあって笑えるから、話が暗くならないのもいい。