南アフリカの赤ワイン「カベルネ・ソーヴィニヨン(CABERNET SAUVIGNON)2017」
写真はメインのステーキ登場前。
南アフリカ有数の銘醸地として知られるフランシュホークを拠点とするレオパーズ・リープのワイン。
ラベルに描かれるのは3匹のヒョウ。
ブドウ産地近くのケープ山脈にはケープ・マウンテン・レオパード(ヤマヒョウ)が生息していて、ワイナリーでは希少生物であるこのヒョウの保護活動を行う「ケープ・レオパード・トラスト」への支援を積極的に行っており、売り上げの一部はその活動資金として使われているんだとか。
ついでにその数日前に飲んだのはチリの赤ワイン「モンテス・アルファ・カベルネ・ソーヴィニヨン・ヴィンテージ・セレクション(MONTES ALPHA CABERNET SAUVIGNON VINTAGE SELECTION)2011」
ブドウの作柄がよかった年にのみにつくられ、8~10年たった今ごろが飲みごろのワインだとか。
カベルネ・ソーヴィニヨン90%,メルロ10%。
ワインの友で観たのは、だいぶ以前にNHKBSで放送していた日本映画「東京暮色」。
1957年、つまり今から60年以上前の映画だが、4Kデジタル修復版なので画像は鮮明だ。
監督・小津安二郎。
笠智衆、原節子、有馬稲子の3人家族をめぐる物語だが、とにかく悲しく暗い映画だった。
父親の笠智衆は銀行でそれなりの地位についているが、二女の有馬稲子が生まれてすぐ、仕事で長期に自宅を留守にしている間に女房(山田五十鈴)は笠智衆の部下の若い男と出奔し、それ以来、3人の子どもを1人で育ててきた。しかし、山男だった長男は谷川岳で遭難死し、小説家(信欣三)に嫁いだ長女の原節子は夫との不和で幼い娘を連れて実家に帰って来ているし、短大を出たばかりの二女の有馬稲子は遊び人たちと付き合うようになって、その中の若い男と肉体関係を持って妊娠してしまう。
どうみたって明るい話は展望できそうにないが、笠智衆は淡々と生きている。
3人の家族に笑顔はない。特に一切笑うシーンがなかったのが二女役の有馬稲子だった。
彼女は自分を妊娠させた男を探して夜の街をさまようが、なかなか見つからない。自分は本当に父親の子どもなのか?と疑っていて、雀荘で自分を産んだ母の山田五十鈴と再会したときもそれを追及する。ついに借金して中絶手術を受け、ようやく現れた男にビンタを食らわせて夜の街に飛び出していくが、踏切事故で死んでしまう。
そんな妹の最期をみたからか、姉の原節子は「自分の娘にはこんな悲しい思いはさせたくない。家庭を幸せにするのも自分の努力次第」といって別居中の亭主の元に戻ることを決意する。この映画の唯一の救いはこれぐらいだったろう。
そして、映画のラストは、きょうもいつもと変わらずに出勤する笠智衆の後ろ姿で、孤独感がたっぷりと漂っていた。
暗くて悲しい映画だったが、監督はあのラストシーンの男の背中に何か訴えるものを感じてあの映画をつくったのかもしれない。たしかによくできた作品だった。
何といってもカメラワークのよさ。4Kだとそれがよくわかる。
役者の演技がまたいい。みていてほれぼれとしてしまった。
笠智衆、原節子、有馬稲子、山田五十鈴、信欣三のほかにも、高橋貞二、杉村春子、中村伸郎、宮口精二、浦辺粂子、藤原釜足、長岡輝子などなどと、懐かしい顔ぶれ。しかもみんな若い!
このうち生きているのは、この映画のとき25歳ぐらいだった有馬稲子ぐらいだが。
細かい演出が心にしみる。
有馬稲子が場末のラーメン屋で自分を妊娠させた男と最期に会うシーンで流れていたのは沖縄民謡の「安里屋ユンタ」だった。
夫の笠智衆を捨てて若い男と出奔し、今また別の男(中村伸郎)と北海道で新しい生活を始めようと、山田五十鈴が上野駅から夜行列車に乗るシーン。
上野発21時30分青森行きの急行で、翌朝青森に着いて、そこから青函連絡船で北海道に渡る。昔、よく乗ったなー、夜行列車、と思わせる場面。
ホームでは見送るさまざまな人たちに混じって、大学の応援団が学生を送り出すのだろう、明治大学の校歌をエンエンと歌っていた。
勇ましい校歌の響きは、実は悲しみを歌っていたのかもしれない。