善福寺公園めぐり

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タンタンの冒険と歌舞伎

正月休みの最終日4日は、前から観たかったスティーヴン・スピルバーグ監督の『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』を新宿ピカデリーで観る。


『タンタンの冒険』はベルギーの漫画家エルジュがフランス語で描いた人気コミック。世界50カ国語に翻訳され、2億5千万部も売れているという。
このコミックをベースに『インディ・ジョーンズ』シリーズのスピルバーグ監督がフルデジタル3Dで映画化。
それも、モーションキャプチャという手法を使ったCGアニメーションで、人物の顔以外はほとんど実写版と見間違うほど。いや人間の顔もよくみるとホンモノっぽい。実写ではとても不可能と思えるような手に汗握るジョットコースター級アクションが繰り広げられる。

モーションキャプチャとは現実の人物や物体の動きをデジタル的に記録する技術だそうで、特に後半のハヤブサとタンタンとの組んずほぐれつの空中シーンや、ハドック船長と悪役とが波止場でガントリークレーンの鉄骨アームをぶつけ合うシーンなどは息もつかせない。これに3D効果もあわさって、臨場感はハンパじゃない。

インディージョーンズよりすごい全編アクションという感じで、出演者は男ばかり。それも仲良し2人組。女性も出ていたが恰幅のいいソプラノ歌手で、歌うのみ。

アバター』が3Dの可能性を示す最初の作品といえるものなら、この『タンタンの冒険』は実写とアニメとが融合した作品の先鞭をつけるものといえる(同種の技術を使った作品はほかにもすでにあるかもしれないが、筆者が見た限りで完成度においては『アバター』と『タンタンの冒険』が先駆けといえるのではないか)。

余談だが、現実とアニメが融合した作品といえば、日本でいえば歌舞伎だろう。舞台の上で演じているのは生身の役者であり現実だが、それがときにものすごい隈取りの顔となり、絢爛豪華な見栄となり、空中を舞う宙乗りとなり、まるでアニメというか漫画そのもの。それらが融合した様式美が実にすばらしい劇空間を生み出す。
コンピュータを駆使するわけでもなく、知恵と工夫でそれをやり、しかも何100年も前からやってるのだからスピルバーグよりエライといえる?
なぜか『タンタンの冒険』をみて歌舞伎を連想してしまった本ブログの筆者なのであった。

物語は──。
タンタンは、世界中を飛び回り、スリルと興奮に満ちた冒険を最高に面白い記事にする少年レポーター。ニッカボッカとクルっとはねた前髪がトレードマーク、相棒は勇敢な白いフォックステリアのスノーウィ。ある日のこと、タンタンは蚤の市で見つけた帆船の模型に魅了され購入する。だがその直後から正体不明の男たちに追いかけられるようになる。

その模型は、17世紀に海上で忽然と消えたといわれる伝説の“ユニコーン号”だった。謎を察知したタンタンが調べると、模型のマストに暗号が記された羊皮紙の巻物を発見。暗号はユニコーン号の財宝のありかを示していた。船の模型は3つ。巻物が3つそろって初めて暗号が完成する。財宝を狙う者たちの驚くべき正体とは……。迫り来る危険と闘いながら、タンタンの冒険が始まる……。

映画はおもしろかったが、気になる点が1つ。
映画の登場人物たちはみんなタンタンのことを「チンチン」と呼んでるのに、なぜか日本語訳の字幕では「タンタン」。

たしかに『タンタンの冒険』はフランス語の原題が『Les Aventures de Tintin』といって、フランス語の場合は「Tintin」を「タンタン」と発音するのだからこれは正しい。

しかし、映画は『The Adventures of Tintin』となってアメリカ映画。英語では「Tintin」を「チンチン」または「ティンティン」と発音するから、英語読みにすると「ザ・アドベンチャーズ・オブ・チンチン」となるはずだ。
それなのに、ほかのところは全部英語なのに名前のところだけ「タンタン」となるのに違和感を覚えた。
「チンチン」は欧米人にとってはなんともなくても、日本人にとっては余計な妄想を抱いてしまうからか。

まあ公式的には『タンタンの冒険』という邦題があまりにも有名なので、それに準じただけで他意はございません、となるのかもしれないが、チョイと気になった次第。

[観劇データ]
2012年1月4日
新宿ピカデリー
3D字幕 タンタンの冒険
スクリーン9 F列 9番
(座席はなかなか座り心地がよろしい)