善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

国立劇場新春歌舞伎 四天王御江戸鏑

国立劇場で初春歌舞伎公演「四天王御江戸鏑(してんのうおえどのかぶらや)」を観る。
いつもはだいぶ役がこなれてきた後半に観に行くのだが、やっぱり新春気分を味わうには正月早々がいいと早めに行く。(実はNHKは3日の公演を生中継していて、それは見ずにビデオで撮っておいて、あとのお楽しみに)
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出演は尾上菊五郎中村時蔵尾上松緑尾上菊之助その他。何でも200年ぶりの復活上演だとかで、1815年の江戸・中村座での初演以来の上演。

再演されなかったのは芝居がおもしろくなかったからではない。もともとこの芝居は、当時のオールスターが集まっての顔見世興行のためにつくられたもので、その後、同じメンバーが集まることは難しく、なかなか再演の機会に恵まれないまま、200年がたってしまったという。

このところ、昔の歌舞伎の復活に力を注いでいる菊五郎が、発掘したのがこの作品。当時のままではなく、かなり現代風にアレンジしたというが、なかなかの作品に仕上がっている。

題材というか登場人物がすごい。平安時代の勇将・源頼光とその家臣の四天王(渡辺綱坂田金時などなど)、平将門の遺児とかいう相馬太郎良門、それに土蜘蛛の精に渡り巫女の茨木の婆。場面も、京都・一条戻り橋から一転して江戸は吉原の羅生門河岸、二条大宮源頼光館、北野天満宮と変幻自在。渡辺綱が鬼神の片腕を切り落とす「酒呑童子」の話とか、いろんな物語をごった煮にして、パロディ化して脚色しているところがおもしろい。

おそらく江戸時代の人であれば、平将門とか頼光、その四天王などは武者絵などでも知っていたし、彼らにまつわる物語も有名だったから、そういった話が奇想天外に描かれていれば、夢中になって観たに違いない。

しかも、大道具の仕掛けなどスペクタクルの要素も散りばめられていて、現代人も飽きさせない。巨大な土蜘蛛があらわれたり、菊之助宙乗り、紅蓮に燃える舞台など、いかにも正月らしく華やかだった。

それと今回は菊五郎劇団中心で役者が少なかったこともあるのか、1人2役が多かった。それがまたよかった。たとえば菊五郎は将門の遺児・良門と鳶の頭・綱五郎(実は渡辺綱)、菊之助は女郎・花咲と一条院)、時蔵源頼光と渡り巫女の茨木婆といった具合。1粒で2度おいしいグリコみたいで、一度の公演で2つの演技を楽しめたの感。

菊五郎の気が利くところは、ちゃんと“初笑い”を用意してくれること。幕が開くと龍宮城の場面で、星鮫入道蒲鉾とか、鰊の局、真鯛太郎塩焼、寒鰤次郎照焼など良門の家臣が海中の生き物に仮装して出てくる。
女郎屋の場面では、チビッコ役者(本物の女の子たち)がAKB48の「会いたかった、会いたかった・・・」を歌い踊るし、菊五郎が“お土砂”とかいう怪しげな粉を振りまくと、だれもがヘナヘナとなって倒れてしまうところは大いに笑えた。(ナントついでに話題の“戦場カメラマン”まで登場)

菊五郎はさすがに見得を切るところがカッコよくてほれぼれしてしまう。べらんめえの口調もさすが。だが立ち回りになると動きが遅い。まあ、重そうな刀を持っていたし、年もとってきたからしょうがないか。

松緑菊之助の若手の成長が著しい。以前観たときと比べてずいぶん上手になったなーという印象。これなら海老蔵がいなくたって大丈夫だ。
とくに贔屓の菊之助をきょうはたっぷり観ることができて、うっとりさせられた。よっ、若音羽
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正月公演恒例の手拭いまきでは見事手拭いをゲット。ついでに菊之助が放った蜘蛛の糸も・・・。
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