善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

二槽式洗濯機

きのうの「朝日」声欄(3月19日付)に載っていた投書に感銘を受けた。北九州市八幡西区在住の80歳の女性からの投稿で、概略次のような内容だ。
わが家の洗濯機は今どき珍しいかもしれないが二槽式です。
長年の使用のためか脱水の方のタイマーが壊れ、タイマーを回して手を離すとジーッと鳴ってゼロに戻ってしまうようになりました。販売店に修理を頼むと、もう部品がないので無理、とのこと。他の部分は完全に動いているのに廃棄処分にはできないと、決心して使い続けることにしました。
3分間、与えられた体操の時間と思って、片足立ちしながら手でタイマーを押さえてます。80歳の身、いつまで続けられるか分かりませんが、洗濯機も長生きさせたいです。
それにしてもメーカーさん、他の部分は丈夫に作ってあるのですから、部品の方もいつまでも使えるようにお願いします。

かくいうわが家の洗濯機も二槽式で、息子が生まれる前に購入したから、もう20年以上使い続けていることになるが、いまだに健在である。
ダイヤル式というのか、ダイヤルをジーッと回してタイマーをセットし、時間がきたらスイッチが切れる、実にシンプルな洗濯機だ。モーターが壊れないかぎり故障もないと思っていたが、タイマーが壊れることもあるらしい。それでも洗濯・脱水の機能には問題がないからと、ご自身体をタイマーがわりにして使い続けている女性の姿は美しいと思う。

どんなものでも、シンプルなものほど意外と頑丈にできているのではないだろうか。いろんな機能をゴテゴテとつけ加えて、あれもできますこれもできますと、便利で多機能にしたのはいいが、むしろ融通がきかなくて故障も増えた、という話を聞く。そういう“便利な”最新機器は寿命も短く、数年も使ったら修理するより買い換えた方が安くつくというシロモノも多いらしい。

話は違うが、以前、こんな話を聞いた。
10人乗れば定員となる小型プロペラ旅客機を操縦する機長は、以前、大型のジェット旅客機を操縦していたこともあったという。風が吹けばヒラヒラと揺れる小型プロペラ機よりも、大型ジェット機のほうが安全で操縦がしやすいのではありませんか?と聞いたら、機長はこう答えた。
「いやいや、コンピュータ頼み、機械頼みの大型ジェット機より、自分の目と手で自由に操縦できる小型機のほうがずっと安全で、快適すよ」
昔ながらの二槽式洗濯機は、さしずめプロペラ飛行機かもしれない。
10人乗りプロペラ機の高度はせいぜい数100~1000メートル。窓からのぞくと、晴れていれば走る車、歩く人の姿さえよく見え、自分が大空にいることを実感させてくれる。それは、グルグルとまわる水と一緒に洗濯物が組んずほぐれつする様子の中に小宇宙を見るのと、どこか似ているのかもしれない。