善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

サヨウナラ天徳湯

きのうは夕方、近所の銭湯に行く。
JR西荻窪駅から5、6分ほど歩いたところにある「天徳湯」。
創業は1928年(昭和3年)。元は「天徳温泉」といってたそうだが、今の経営者に代わってから「天徳湯」と改めた。
善福寺に住み、日本野鳥の会を創設した中西悟堂は随筆の中で、湯の花を溶かしていた昭和初期の「天徳温泉」に往復四里 をかけて入ったことが記されているとか。
その天徳湯が今月いっぱいの7月30日(日)に閉店し、廃業するというので、名残惜しくて銭友(銭湯仲間をこう呼ぶらしい)と入りにいった。

といっても天徳湯に行くのは何十年ぶり、銭湯も久しく行ってないから、ハテいくらだっけ?と仲間に聞いたら、大人料金460円なりという。

午後4時すぎの営業開始直後に行く。
まだ外は明るい。客はチラホラ。
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駅に近く、すぐ裏手は吉祥寺東町、また東京女子大学もすぐそば。
それでもやっぱり客はかなり減っているのだろう。
また経営しているご夫婦は70代で、跡継ぎもいないので店を閉じることにしたという。

銭湯は五叉路にあり、隣はコインランドリーで、向かいにはそば屋に酒屋、すし屋。昔ながらのにぎわいの雰囲気が残っている。
何より昭和34年に建てられた伝統的木造建築の「宮造り銭湯」がいい。玄関の屋根が立派な二重の千鳥破風入母屋の屋根になっていて、よーく目を凝らすと、千鳥破風には立派な鏝絵(こてえ)が描かれてある。
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中に入ると天井の高いこと。
そして大きな浴槽の背景画は、富士山でも浜の松原でもなくて、カッパのタイル画。
何と、作者はカッパのマンガで知られれる清水崑だという。
女将さんの話だと、カッパの絵は昭和61年からで、その前は富士山の絵だった、という。
しかし清水崑が亡くなったのは昭和49年(1974年)だから、死後何かの理由で絵が遺作としてよみがえったのだろうか。

カッパというと川に棲むカッパを連想するが、タイル画に描かれているのは海に棲むカッパたちだ。
イルカや魚に乗ったカッパたちが生き生きと描かれている。
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近く閉店するというので記念に備品を分けているようで、身長計や体重計には「予約済み」のラベルが貼ってあった。
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意外な工夫のあとも見つけた。
浴室へのガラスの開き戸には「開けるとひとりでに閉まります」の張り紙があり、たしかに開けると自動的に閉まる。
それは開き戸がナナメに傾斜して設計してあるからで、これならたしかに何もしなくても閉まるはずだ。
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一番湯だからメッチャ熱い湯だったが、広々とした浴室空間、のびのびとしたカッパの背景画に癒されたひとときだった。

閉店後、カッパの絵は取り壊されるという。
建物も当然なくなってしまうのだろう。

歴史の証(あかし)がまたひとつ消える。