善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

棒あなごとコムジャンオ

先日、仕事の帰りに品川駅前にある秋田県のアンテナショップ「あきた美彩館」とかいうところで昼飯。帰りに県産品ショップをひやかしたら、目にとまったのが男鹿特産珍味とうたった「棒あなご」。
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「男鹿で唯一人の漁師だけが獲っている幻の味」と書いてある。アナゴ好きとしては食べてみたい衝動に駆られ、購入。
家に帰って焼いて食べる。
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焼きが足りなかったのか、ちょっと生臭いが、うまい。とくに、こげてる皮目あたりが香ばしい。酒が進む。
それにしても「棒あなご」ってどんなアナゴだろう?

調べてみたら「棒あなご」はアナゴじゃなかった。
クロヌタウナギという深海魚で、見た目はいかにもグロテスク。

水深50~400メートルの海の底に生息し、脊椎がなく、脊索と呼ばれる脊髄みたいなものがあるだけで、原始の脊椎動物の形を今に残しているという。
体は細長く、50センチほど。深海ゆえに目は退化し、それで昔は「メクラウナギ」とも呼ばれた。
口は穴状で縁にひげを生やしている。エラはなく、6対の小さな穴が腹部にある。尾びれはあるがヒレはない。
ウナギといっても、いわゆる蒲焼で食べるウナギとは異なり、どちらかというと八目ウナギに近いのだとか。

男鹿の漁師の浜料理がルーツといわれ、昔は盛んに獲っていたというが、今、漁をしているのはたった1人という。
そのままでは食用に向かず、ハラワタをとったあと天日干しをして、急速冷凍して保存する。
食べるときも冷凍のまま焼き網にのせて焼いて食べる。冷凍したままなので棒のようにピンと伸びて、まさか「ヌタウナギ」では売れないから「棒あなご」としゃれた名前となった。

そこでさらに意外なことに気づいた。
たしか去年、ソウルを旅したとき、食べ物屋の店先に水槽があって、その中にチューブワームのような不思議な生き物がのたうち回っていた。
「まさかあんなもの食べられないよね~」とまっさきに敬遠したのが、実はヌタウナギだった。韓国では「コムジャンオ」というらしい。

とくに港町の釜山では、魚市場、屋台街、スーパーで普通に売られ、食されているという。
ヌタウナギは世界中で獲れるそうだが、食用として食べる国は少なく、その中でも韓国では盛んに食べられていて、中でも釜山は専門店もあるほどの人気だという。

それが、秋田の男鹿地方でも食べられているということは、食は日本海を伝って共通のルーツを持っているということか。