善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

クリント・イーストウッド「J・エドガー」

日曜日朝の善福寺公園は晴れ。北風強く極寒。
上池の端にびっしりと霜柱、まるで氷柱のごとく。
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きのうは封切ったばかりのクリント・イーストウッド監督『J・エドガー』を大泉学園のT・ジョイ大泉で観る。初日のしょっぱなの回だったが、観客は数えるほど(もっとも8時50分スタート)。注目度はイマイチか。

FBIの初代長官にして、亡くなるまでの50年間長官として君臨したJ・エドガー・フーバーの一代記。主役でフーバー役はレオナルド・ディカプリオ。秘書のヘレン・ギャンディ役に『キング・コング』に出てたナオミ・ワッツ

CGとか3Dといった“虚構”ばやりの中で、丁寧にカメラをまわすシンプルなつくり。フーバーの20代から70代までをディカプリオが演じていて、特殊メイクは相当凝っていた。同じようにしてナオミ・ワッツもおばさん顔が多く、ファンとしてはちょっぴりさみしい。
映像もモノクロのような感じで、影の濃さがフーバーという人物の影の部分を引き立てる。
音楽もイーストウッドで、自分でもピアノを弾いていたらしい。

場面転換が秀逸で、20代のフーバーと70代のフーバーが入れ違いに出てきても違和感がない。過去と現在をタイムマシンで行き交っているような感じがして、物語への理解を深めてくれた。

だが、全体的な出来ばえとなると評価は別れるだろう。私は否定的に観た。
フーバーという人は、「アメリカ」を守るという点で大きな役割を果たした傑出した人物かもしれないが、問題も多い。
FBIを強大な組織にしていった功績は大きいかもしれないが、政治家などへの盗聴をはじめさまざまな陰謀を仕掛け、政治を裏から操った人物といわれる。

中でも共産主義者とかそれに同調する人、さらには共産党と関係なくても進歩的な主張をする人たちを排除・失脚させる“赤狩り”の急先鋒だった。当時、議会上院の共和党議員マッカーシーらを先頭に“赤狩り”の嵐が吹き荒れ、マッカージズムともいわれる(おかげでチャプリンにも国外追放命令が出され、アメリカを去った話は有名)が、マッカーシーに情報を提供し、背後からたきつけたのはフーバーだったといわれる。

映画も、70をすぎたフーバーが回顧録をつくろうとして、部下に若き日のエピソードを口述筆記するところから始まるが、20代のフーバーが最初に手がけたのが、共産主義者による司法長官宅への爆弾テロ事件だった。過激に走る連中の情報を調べ上げ、次々と国外追放処分にして、「共産主義によるアメリカの脅威」を取り除いていく。つまり、「アメリカを守るためのフーバーのたたかい」のはじまりである。
ところが、その後、マッカーシーと結託した“赤狩り”の陰湿な話は映画ではまったく出てこない。

朝日新聞のインタビューにイーストウッドはこう語っている。
「(フーバーがFBI長官だった時代は)『内なる敵』は外敵より危険だという9・11同時多発テロ以降の米国や世界の状況と似ている。それがこの物語に興味を持った動機の一つだ」

イーストウッドは、「内なる敵からアメリカを守った男」としてフーバーを描きたかったのだろうか。

映画のあとは定番コースで大泉学園駅そばのイタリアンの店「della Casa(デッラ・カーザ)」へ。ところが店にはシャッターがおりていて、「1月22日を期して六本木へ引っ越し」の張り紙が。がっくし。

しゃーないとそのへんをウロウロして、やはりイタリアンの「エノテカリオーネ」という店に落ち着く。味はまあまあ普通。ワインをグラスになみなみと注いでくれて300円というのが気に入った。
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