もう10年以上も前になるだろうか。新潟・佐渡に仕事で行く機会があり（それも日帰りで）、新潟港から船で両津にわたり、そこからタクシーをチャーターしてタライ舟で有名な小木まで行き、とっかえして再び夕方の船で新潟に戻るスケジュールだった。
両津港で高速船を待つ間、乗り場のそばの食堂で刺身をつまみながら一杯やり、売店でお土産を買おうとみまわしたら、生干しのスルメに目がいった。「ここのスルメはおいしいよ。函館からきた人が“負けた”っていうほどなんだから」との言葉に誘われ買って帰ると、これが実にうまかった。それまでの人生でいちばんといえるスルメだった。
以来、スルメと聞くと、その両津港で買った生干しスルメの味を思い出す。
以来、スルメと聞くと、その両津港で買った生干しスルメの味を思い出す。
数日前、連れ合いが新潟に出張に行くというので、「時間があったら佐渡にわたって、高速船の乗り場の売店で売ってるスルメを買ってきて」と頼んだら、ホントに買ってきてくれた。何でも１パイごとに手作業で天日干ししたスルメだとか。
さっそく網に乗せてあぶる。そっくりかえって、ほんのちょっぴり焦げめがついたのを、アツアツといいながら2人して裂き、山形・酒田の酒「上喜元」を飲みながら口に運ぶ。いいようのないうまみが口中に広がる。あの味を思い出す。きょうはスルメだけで、ほかのものはいらない。
