善福寺公園めぐり

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戦争を笑い飛ばす「まぼろしの市街戦」

銀座・エルメスビル10階のミニシアター「ル・ステュディオ」でフランス映画「まぼろしの市街戦」を観る。

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1962年の作品。

原題「LE ROI DE COEUR」

監督・製作フィリップ・ド・ブロカ、出演アラン・ベイツジュヌヴィエーヴ・ビジョルドピエール・ブラッスール、フランソワーズ・クリストフほか。

 

1918年10月、第一次世界大戦末期のフランス北部の町。敗色濃厚なドイツ軍は撤退の間際に大型時限爆弾を仕掛け、進軍してくる英国軍を町ごと吹き飛ばそうと画策していた。

情報を察知した英国軍は爆弾を解除すべく、フランス語がわかるという理由で伝書鳩係のプランピック(アラン・ベイツ)を町へ潜入させる。敵に見つかったプランピックは、精神科の療養所に逃げ込み事なきを得るが、そこでは取り残された患者たちがトランプ遊びに興じていた。

住民も敵兵も去り、無人となった町で、必死に爆弾を探すプランピック。だが彼を“ハートの王”と崇め、お祭り騒ぎに興じる患者たちのせいで捜索は一向に進まない。はたしてプランピックは時限爆弾を無事解除できるのか?その運命やいかに!

 

戦争の愚かさをコミカルにドタバタ劇で描いて笑い飛ばす、なかなかの傑作だった。

争いなんかとは無縁で、自由気ままに生きる精神科の患者こそが「まっとうで、普通の人たち」であり、人と人とが平気で殺し合う軍隊は、実は「普通じゃない、おかしな人たち」なんだということを教えてくれる。

 

監督のフィリップ・ド・ブロカジャン=ポール・ベルモンドと組んで「大盗賊」(62年)や「リオの男」(64年)なんかを撮った人。

精神科の患者を演じる役者たちがみんなとてもうまく、大いに笑わせてくれる。

主要な役者も名の知れた人たちで、主人公のプランピックを演じたアラン・ベイツは「その男ゾルバ」でアンソニー・クインと共演。彼に恋する女性コクリコ役のジュヌヴィエーヴ・ビジョルドは「1000日のアン」でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされるなど、人気俳優たちによる熱演、競演だった。

 

ところで、映画に登場した英国軍はスコットランド人の部隊で、みんなスカートをはいていた。「パンツははいてないのか」というようなセリフもあったが、スコットランドの人たちがああいう恰好でバグパイプを吹きながら行進する姿は見たことがあるが、まさか戦争するときもあの恰好だったのか、と思ったら、あれはスカートではなく、キルトというスコットランドの民族衣装で、キルトは100%男性用で女性は着用しないのだとか。

しかもキルトのときは下着もつけないのが正式という。このため、うっかり風で巻上がったりして丸見えになると困る、というのでキルトの前側にポシェットみたいなものを下げて“重し”にしているという。

なるほど。おもしろくて、勉強にもなった映画だった。