歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」夜の部を観る。
去年の9月、仁左衛門の助六を見て以来、「次はぜひとも仁左衛門の弁慶を見たい!」と、ずっと仁左衛門が弁慶をやる日を心待ちにしていて、「しかし、出ずっぱりで体力も使う弁慶は、年齢的にもムリかな?」と思っていたら、1年後の九月大歌舞伎で実現した。
仁左衛門の弁慶は11年ぶりとのことだそうで、これで最後かもしれない。
さすがに毎日やるのは大変みたいで、仁左衛門は奇数日のみ(偶数日は幸四郎)で中1日の休み。
花道から仁左衛門の弁慶が出てきたところで、思わず「待ってました!」と叫んでしまった。あー恥ずかしい。
渾身の弁慶で、豪快であると同時にどこか気品が漂うのは仁左衛門ゆえか。
義経の孝太郎、義経の四天王の1人・駿河次郎の千之助、親子三代の出演でもあった。
親子三代といえば「勧進帳」の前の「寺子屋」も、松王丸の吉右衛門、松王丸の妻・千代の菊之助、管秀才の丑之助と、こちらも親子三代の出演。
吉右衛門のうまさはいうまでもないが、今回は千代の菊之助がとてもよかった。
息子を死なせてしまった母の悲しみ。
義太夫の三味線と語りに合わせて、嘆き悲しむ“くどき”の場面が涙を誘う。
菊之助のしぐさは義太夫とぴったりと合っていて、文楽の人形ぶりをも思わせた。
つまり、ただ「悲しい悲しい」と感情をぶつけるのではなく、形の美しさを表現することで、より悲しみを際立たせているのだ。
「松浦の太鼓」は忠臣蔵の外伝のひとつ。
「寺子屋」「勧進帳」と力作が続いて、最後の付け足しみたいであまり期待していなかったが、笑いもあってなかなかおもしろかった。
この舞台、三世中村歌六百回忌追善狂言であり、主役の五代目歌六に息子の米吉、歌六の弟の又五郎、又五郎の息子の歌昇、種之助と歌六家の役者が揃って出ていた。
芝居がハネたあとは、歌舞伎の余韻さめやらず、近くの「和もと」でイッパイ。
何年ぶりかの訪問だったが、いつ行ってもご主人夫婦が温かく迎えてくれて、心なごむ店だ。チェーン店ばかりの中でホッと安心できる店。
サッポロラガービールのあとは日本酒。長野・飯山の「北光」という酒。
「聞いたことのない酒だ」というと、流通しているのはほとんど地元周辺で、まだ東京には出回っていないという。杜氏はまだ30代の若さだとか。
口あたりがよくておいしい酒だ。
つまみは、まずはお通し。いろいろあって楽しい。
刺身盛り合わせ。
アズキハタが歯ごたえがあって美味。
ホタテサラダ。
ホタテの刺身が入ってるかと思ったが、ホタテの佃煮だという。
これが酒に合う。
白魚の唐揚げ。1匹1匹きれいに揚がっていて、口の中に入れると途端にとろける。
これも酒にピッタリ。
今夜もご機嫌で帰還。