善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

オオミズアオ

善福寺公園できのう見た美しげな蛾は、どうやら「オオミズアオ」という蛾らしい。
頭のほうにあるのはコブじゃなくて、蛾の胴体だろう。要するにひっくりかえって葉にとりついていたんだね。

オオミズアオを漢字で書くと「大水青」。ヤママユガ科の一種。北海道から九州にかけての平地から高原まで幅広く生息していて、よく見かける蛾だという。

「水青」とは変わった色だ。そんな色があるのか。辞書で調べると「水青」とは「馬の毛の色」とある。「青毛の色の淡いもの」を指すそうだが、「水青」とは美しい響きだ。

学名は「Actias artemis」。
アルテミスとは、ギリシャ神話に出てくる月の女神アルテミスのこと。
水青の色合いが月の輝きのように見えるからついた名前だろうか。英名も「Luna moth」。

アルテミスについては以前、ちょっと調べたことがある。
ギリシャ神話の主神ゼウスの娘。最初は狩猟の神だったが、時代を経るに連れて豊穣や多産を司る地母神となっていった。

紀元前550年ごろ、現在のトルコ西部にあった古代都市エフェソスにアルテミスを祭るアルテミス神殿が建てられた。アテネパルテノン神殿を上回る規模を誇り、かつては「世界の7不思議」の1つに数えられたほどだという。しかし、破壊されたりして今は原型をとどめていない。

現在、トルコのセルチュクという町にあるエフィソス博物館には2体のアルテミス女神像が展示されていて、頭上には冠をいただき、身体部分には地母神の使者であるミツバチやライオンの頭、蟹、鹿、雄牛などの装飾がほどこされ、胸にはいくつものコブのようなものがあり、多産を意味する乳房とも、1群に数万匹もいて多産の象徴ともいえるミツバチの卵、あるいは毎日卵を産み続ける女王蜂(アルテミス)に群がるミツバチではないか、ともいわれているとか。

そんなアルテミスはなぜ月の女神になったのか。
アルテミス女神像にミツバチが描かれているように、アルテミスはミツバチと関係が深い。そしてミツバチは月と浅からぬ縁がある。

知の巨人・南方熊楠がイギリスはロンドンにいたころ、熱心に「ネイチャー」に論文を寄稿していて、その中にミツバチについての記述がある。
熊楠論文によると、古代ギリシャのポルフュリオスによれば、月はギリシャ語でミツバチとも呼ばれ、死者の魂はミツバチの姿となって月から地上に舞い降りてくると考えられていたという。

あるいは、古代ギリシャでは豊穣は月からやってくると考えられていたのだろうか。