善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

モンクロシャチホコ

敬老の日善福寺公園は晴れ。だいぶ秋らしくなってきた。

きのう見かけたケムシ、アメリカヒロシトリかチャドクガか、と書いたら、「モンクロシャチホコではないか」とのご指摘をいただいた。
確かにその通りで、公園事務所によると、今年は大量発生してサクラが大被害を受けているという。

そういわれてあらためて公園のサクラを見ると、たしかにモンクロシャチホコに葉っぱが食い荒らされた木が多い。老木が多いので早々と散ってしまったのかと思ったら、害虫による食害だったのだ。
下は善福寺公園のサクラの木。まだ9月というのに葉っぱはほとんどない。
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一方、こちらは善福寺のサクラの木。食害にあっていないため、まだ青々としている。
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モンクロシャチホコは蛾の一種。幼虫のはじめのころは赤褐色だが、終齢幼虫になると黒色になり、黄白色の長毛が生じて5センチぐらいの体長となる。それがだいたい9月の今ごろで、このころは活発に葉っぱを食べるので食害が目立つようになる。やがて土中に入って蛹となり、越冬して7~8月になると羽化し、葉っぱの裏に卵を産みつけるという。

蛾になると白っぽい翅に紋付きの紋のように黒い点がついてるから「紋黒」で、幼虫時代にしゃっちょこばるから「鯱(しゃちほこ)」。
たしかに見ていると、ときおり頭と尻をあげる独特のポーズをする。別名、船の形に似ているからとフナガタムシ(船形虫)、尻上げ虫とも呼ばれ、サクラの木を好むことから桜毛虫とも呼ばれる。

モンクロシャチホコはサクラ、ウメ、リンゴ、ナシなどバラ科樹木を加害するので、昔から果樹の害虫としても有名だが、最近では公園や庭のサクラに異常発生して騒がれることが多いようだ。この虫が大発生するとサクラの樹下に大量の糞が落ちるのですぐにわかるのだとか。
また、サクラに対する食害は秋が中心なので木の成長にはそれほど悪影響を与えないというが、花芽も食べられてしまうので、翌年の開花への悪影響は避けられないだろう。

それなら農薬で退治すればいいかというと、そうもいかないようだ。
なぜなら、たしかに見た目はグロテスクだし、毛虫が嫌いな人にとっては「存在するだけで害」であるが、毒を持っているわけではなく、人間には無害だという。

人間には無害なモンクロシャチホコを駆除しようとすれば、環境や人体に害がある農薬を使用しなければならない。それではデメリットの方が大きいというわけで、原則的には公園での駆除はしないのだという。

ただし、あまりにも公園の植物に影響が大きければ、何らかの対策をとらねばならなくなるだろう。

それにしても、なぜサクラがたくさん植えられている場所でモンクロシャチホコが大量発生するのか。1つの考え方として、サクラ(特にソメイヨシノ)の単一植栽に原因があるのでは、との指摘がある。
サクラばかりが植えられていると、いったん虫が発生すると大喜びであっちの木、こっちの木と食べて育っていくので、どうしても大量発生につながるのだという。

たしかに、サクラの名所というと自然の植生を破壊した形で成立している場合がほとんど。ほかの樹木が混在していれば、天敵となる昆虫や鳥類もいるから大量発生にはつながらないものだが、人の手が加わるとどうしても自然のバランスは崩れてしまうのだろう。

本当は、天敵となる昆虫とか野鳥も訪れるような“ごった煮”の自然環境にあってこそ、サクラもスクスクと育っていくのに違いない。

もっとも、サクラの名所があるから、われわれ人間は花見と称して飲めや歌えと大騒ぎできるのだが・・・。

その点では、善福寺公園はほかの植物もたくさん育っているし、野鳥もたくさんやってくる。バランスのとれた公園だとは思うのだが、最近いわれる地球的規模の気候変動の影響も多少はあるのだろうか。