下池の夾竹桃のあたりのクイの上にゴイサギの若鳥が1羽、たたずんでいる。
若者よ、何を思い悩むのか。
スイレンの花が3つ、寄り添うように咲いている。
まるで家族のように。
ハヤカワ・ポケミス『特捜部Q-檻の中の女-』を読む。
若者よ、何を思い悩むのか。
スイレンの花が3つ、寄り添うように咲いている。
まるで家族のように。
ハヤカワ・ポケミス『特捜部Q-檻の中の女-』を読む。
デンマークの警察小説。作者はユッシ・エーズラ・オールスン。1950年生まれだから60そこそこ。デンマークを代表するミステリ作家だとかで、本作はデンマークで2007年に出版されて13万部を売り上げるほどの大人気。ドイツでも人気が高く、40万部売れたというから本国以上。
主人公はコペンハーゲン警察本部に勤務するベテラン刑事のカール・マーク。この男、刑事としてはスゴ腕だが、けっこう強引なところがあって皮肉屋で、警察内部での評判はあまりよくない、どころか、いささか失墜気味。アメリカ、イギリスの刑事モノの主人公の性格とかなり似通っているのは、そもそもデキル刑事とはそういうものなのか、万国共通のミステリのパターンなのか。
ともかく、そんなカールはある日、迷宮入りとなった事件の解明にあたる「特捜部Q」のボスに据えられる。聞こえはいいが早い話が捜査の第一線から外された左遷人事にほかならならず、あてがわれた部屋は暗い地下室。
そもそもQというのがね~。
Qと聞くと「おばQ」とか「キュウリのキューちゃん」とかヒョウキン系を連想してしまう英語圏とは無縁の日本人的発想かもしれないが。
そもそもQというのがね~。
Qと聞くと「おばQ」とか「キュウリのキューちゃん」とかヒョウキン系を連想してしまう英語圏とは無縁の日本人的発想かもしれないが。
部下はデンマーク語を話す怪しいシリア系の変人アサド1人のみ。上層部への不審を募らせるカールだが、仕事ですぐに結果を出さねばならない。自殺と片付けられていた女性議員失踪事件の再捜査に着手すると、アサドの奇行にも助けられ、驚きの新事実が次々と明らかに───。
読み始めて、とても覚えられそうもない名前が次々に出てきて閉口する。ホラン、ヘニングスン、ホイア、ビャアン、ルンゴー、バデスン、アントヴォースコウ、モンデースン・・・。もーやめて~。
(アメリカの小説だって読むのにタイヘンなのに)
(アメリカの小説だって読むのにタイヘンなのに)
でも、ちょっぴりお国柄が感じられるところもあり、1つは警官であっても労働組合に所属していて権利意識が高いこと、日本ではふんぞりかえっている国会議員がデンマークでは一般人とあんまり変わりなく描かれていること、同性愛がけっこうおおっぴららしいこと…などなど。
はじめはかったるい感じだったが、そのうち息もつかせぬ展開に。
現在の話と同時進行で5年前のできごとが語られていくが、やがて現在のある日にピタッと重なったとき、事件は一気に動き出す。
最後の終わり方が、ずいぶん余韻を残すなーと思いつつ読み進めると、とても感動的な結末に思わず涙ぐんでしまった。
現在の話と同時進行で5年前のできごとが語られていくが、やがて現在のある日にピタッと重なったとき、事件は一気に動き出す。
最後の終わり方が、ずいぶん余韻を残すなーと思いつつ読み進めると、とても感動的な結末に思わず涙ぐんでしまった。
ただし、気になったのは訳者(吉田奈保子)の「ら抜き言葉」。「見られる」を「見れる」と使っていたが、文法的にどうなんだろう?
カッコイイ刑事が「必要なリストなら、こっちは自由に見れるからな」なんていう言葉に出会うと、なんだか急に安っぽい兄ちゃんに見えてしまう。
訳者は1974年生まれというから30代の人。「見れる」「食べれる」「起きれる」で育った世代なんだろうな。
訳者は1974年生まれというから30代の人。「見れる」「食べれる」「起きれる」で育った世代なんだろうな。