善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

バルテュス展 光へのこだわり

東京都美術館で開催中の『バルテュス展』を観る。
都美術館に行ったのは何年ぶりだろう。
最近は美術展というと六本木の新美術館に行くことが多かったから、上野に絵を見に行くのも久しぶりだった(日本画とか仏像を観るため国立東京博物館はたまに行くが)

美術館へはエスカレーターで降りていく。
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敷地内には彫刻がいくつかあった。
一番目立つところにあるのが井上武吉「my sky hole 85-2 光と影」(1985)
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これも変わった彫刻。五十嵐晴夫「メビウスの立方体」(1978)
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あいにくの雨で野外作品をじっくり見られなかったのが残念。
ただし、雨のおかげで、あるいは平日水曜日の午前中だったこともあってか、バルテュス展の会場は比較的空いていて、じっくり観ることができた。
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絵は「夢見るテレーズ」

バルテュスが11歳のときに描いた絵に始まり、初期の作品から晩年の作品まで、たくさんのバルテュス作品を堪能できた。
少女を描いた代表作を含めて油彩画が40点以上、素描や愛用品(日本を旅行したときの都内の地図から、勝新太郎から贈られた着物まで)などを加えれば展示物は100点を超えるという。
また、晩年を過ごしたスイス・ロシニエールにある「グラン・シャレ」と呼ばれる住居に残るアトリエを、イーゼルとか絵の具とかも含めてバルテュスが生きていたころと同じに再現したセットもあり、興味深かった。

バルテュスは「夢見るテレーズ」とか、煽情的なポーズをとる少女を登場させたりして何かと物議をかもす画家だが、今回の展覧会を見て感じたのは「バルテュスは光の画家だった」ということだった。
今回展示された作品には風景画も多い。風景を描くため、いかに光を表現するかバルテュスは飽くなき挑戦をしていたのではないか。

たとえば「樹のある大きな風景(シャシーの農家の中庭)」 は、光と影が強烈に描かれているし、逆に「牧舎」は、影はいっさいなく、光だけが見事に表現されている。

そういう目で少女の絵を見ると、たとえば「白い部屋着の少女」は光に浮き上がる少女の美しさが描かれているし、「横顔のコレット」に至ってはまるで顔が光に融けてしまっているようだ。

有名な「夢見るテレーズ」にしても、片足を立ててパンツ丸見えの少女に差し込んでいるのは、すがすがしい朝の光のようでもある。思春期の少女の成長する姿、その一瞬を表現するのは、生命を育む源でもある自然の光なのだ。

作家の江國香織さんがバルテュスのアトリエを訪ねたときのNHKの番組が会場で紹介されていたが、撮影スタッフがライトを当てると「ライトを消しなさい!」といきなり怒り出して、江國さんがドギマギしている様子が映っていたが、バルテュスの自然の光に対するこだわりの強さを感じた。

そういえばバルテュスは少年時代から東洋への憧れを持っていて、飼っていた猫に名付けたのは日本名の「ミツ(光)」だった。