善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

スペイン・フランスバスクとボルドーの旅①

秋分の日の9月22日から10月1日まで、スペインとフランスにまたがるバスク地方を旅してきた。その思い出を綴る。
ピレネー山脈を挟み、西は大西洋にも接するこの地域は、スペイン北端の南バスク、フランスの南端にある北バスクという言い方もされるし、海に接する海バスクピレネー山脈のふもとに広がる山バスクとさまざまな顔を持つ。
一方、ヨーロッパの他の地域とは異なる言語を持ち、人類学的にも他の地域とは違う系統不明の民族が長く住み続けているといわれ、独自の文化を育んできた。
ひところ、独立運動にからんでテロ事件が頻発し、旅行者が訪れるには危険な地域と思われていたが、近年は独立運動も穏便になってきたようで、むしろ美食の地域として人気が高まっている。

今回の旅はターキッシュエアライン(トルコ航空)を利用し、成田からイスタンブール経由でまずはスペインのビルバオに向かい、ビルバオサン・セバスチャン(以上スペイン)→バイヨンヌ(ここからフランス)→ボルドーイスタンブール経由で成田、という行程をとった。

出発は9月22日22時30分発のターキッシュエアラインTK53便。実際には出発が30分早まって22時出発。
最後の日本食というので、このところ夜の出発のときには常食にしている第1ターミナル出発ロビー脇にある「だし茶漬け えん」でウナギのひつまぶし茶漬け。
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機内食は、いつもアツアツのパンがおいしい。総じてターキッシュの機内食の味は悪くなかった。
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ヨーロッパへの旅で何がイヤかといえば長時間飛行機に乗っていなければいけないこと。
成田からイスタンブールまでは約11時間ちょっとで、イスタンブールの空港で4時間ほど待たされて(国際線の乗り継ぎとしては無難な時間)、イスタンブール8時45分発のTK1415便でビルバオ着は12時ごろ。
日本との時差は7時間(夏時間)なので時計をその分だけ遅らせる。
空港から外に出ると、湿度が低いからか風がさわやか。
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空港からはバスでも30分足らずだが、奮発してタクシーで向かう。

最初の宿は市の中心部を流れるネルビオン川のほとりに建ち市庁舎にも近いバルセロ・ビルバオ・ネルビオンというホテル。結局今回の旅で一番立派な宿だった。
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チェックインのあと、荷物を置いて街へ繰り出す。
本日の予定は、お昼を食べて磯崎ゲート、グッゲンハイム美術館、それに世界遺産ビスカヤ橋を巡ること。
ビルバオに限らないが、バスクの街はどこに行っても見事な落書き?アートに出会う。
橋の下の巨大なストリートアート。
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グッゲンハイム美術館に行くためネルビオン川にかかるスビスリ橋を渡ったところにある磯崎ゲート。
ゲートというから門かと思ったら22階建てのツインタワーのことだった。
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日本人建築家の磯崎新とスペイン人建築家のイニャキ・アウレコエチェアの設計によるもので、通称「磯崎ゲート」。
手前の白い橋もなかなかシャレている。歩行者専用のスビスリ橋で、スビスリとはバスク語で「白い橋」という意味だとか。

磯崎ゲートから川沿いをさらに少し歩いたところにあるのがグッゲンハイム美術館だ。
ビルバオは人口約35万人。スペインバスクでは最大の都市で、かつては鉄鋼・造船の町として栄えたという。しかし、重工業の衰退とともに急速にさびれてしまい、打開策として打ち出されたのがアートによる都市の再生プロジェクトだったという。
その象徴がアメリカ人建築家フランク・ゲーリーの設計による、まるで巨大な船を連想するユニークな形状のグッゲンハイム美術館だ。
外装はチタニウムでできているという。
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美術館前のオブジェも巨大で、アメリカ人アーチストの作品「パピー」はクマかと思ったら小犬だそうだ。
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ほかにもこんなオブジェが。
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館内に入る前に美術館のレストランで昼食。
さっそくビルバオ名物のピンチョスと遭遇。ピンチョスとは一口サイズの軽食といおうか、薄く切ったバケットの上にいろんな具を乗せたいわば「バスク風のタパス(おつまみ)」。
バル(居酒屋)に行くと必ずカウンターの上にところ狭しと置いてあり、飲んべえたちはそれをつまんではビールやワインを飲みながらワイワイとやる。
それならと昼間からビールとピンチョスでバスク到着を祝う。
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小鳥が足元によってきておこぼれに預かろうとしていた。
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昼食をとったあと改めて正面の入口から美術館に入る。
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中の展示会場も天井がカーブになっていたり、とてもユニーク。
展示されているのは現代アートの数々。
一部屋すべてアンディ・ウォホールの作品が並べられていたり、マーク・ロスコの絵もあった。かつて千葉の美術館で見て衝撃を受けたのは暗い色調の絵だったが、今回のは赤と黄色っぽい色を基調とした明るい色合いだった。
なぜかマーク・ロスコの絵を見ると感動し、そこを動けなくなる。

しかし、何より圧倒されたのがリチャード・セラという彫刻家の巨大なオブジェのような彫刻作品だった。
とにかくでかい。よくこんなものが美術館の中に入ったなと思うほどだが、実はとても入らないので美術館の中で作ったものではないかとさえ思った。
はじめ木でできているかと思ったが、どうやら鉄板らしい。
ただ、鉄といってもただの鉄ではなく、耐候性鋼板という素材らしい。これはCu、Cr、Niなどの合金元素を含有し、無塗装のままで年月の経過とともに表面に緻密で密着性の高いさびを形成する鋼材だとか。
それでひょいと見て木の木目のように見えたのだろう。
鑑賞者は、斜めになってうねる鉄板の間を迷路を歩くように行き来する。

グッゲンハイム美術館のあとは、郊外にある世界遺産ビスカヤ橋へ。
(以下次号)