善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

ワンコインで草間彌生展

イメージ 1

きのうは買い物のついでに武蔵野市立吉祥寺美術館(昔の伊勢丹、今のFFビル7階)で開かれている「草間彌生展 ワタシというナニモノかへの問い」を観る。

ちなみに会期は11月7日まで。何たって入館料100円は安い!
吉祥寺のど真ん中、しかもたった100円のワンコインで草間彌生を堪能できるというのに、しかも休日なのに、お客はまばら。おかげでゆっくり観ることができたが…。

松本市美術館所蔵の草間作品の中から、1970年代以降のコラージュと版画53点が展示されていて、インスタレーションや大型の作品とはまた違った味わいや、草間芸術の源を知る手がかりが得られる感じがした。

経歴をみると、草間彌生は1929年に長野県松本市の裕福な種苗業を営む家庭に生まれた。400年も続く旧家だというが、幼少時より幻覚や幻聴、強迫神経症にさいなまれ、目の前に同じ模様のパターンが広がって見えたり、植物が話す言葉が聞こえてきたという。その幻視をモチーフに、水玉と網目を用いた絵画制作を始めた。
草間自身が『無限の網』という著書の中で書いている。

「ある日、机の上に赤い花模様のテーブル・クロスを見た後、目を天井に移すと、一面に、窓ガラスにも柱にも同じ赤い花の形が張りついている。部屋じゅう、身体じゅう、全宇宙が赤い花の形で埋めつくされて、ついに私は消滅してしまう。そして、永遠の時の無限と、空間の絶対のなかに、私は回帰し、還元されてしまう。これは幻でなく現実なのだ。私は心底から驚愕した。そして、怖いインフィニティ・ネットに身体を束縛される。

ここから逃げなくては、赤い花の呪詛にかけられて、私の生を奪われてしまう。夢中で階段に駆けていく。下を見ると、一つ一つの段々がバラバラに解体していく。その有様に足を取られて、上から転げ落ち、足をくじいてしまう。

後に私の芸術の基本的な概念となる、解体と集積。増殖と分離。粒子的消滅感と見えざる宇宙からの音響。それらはもう、あの時から始まっていた」

草間作品に繰り返しあらわれるモチーフ、無限に増殖する水玉模様や、網目模様といったものは、自らの強迫観念をあえて作品に表現することによって、不安や恐れから突き抜けようとしたものだったのかもしれない。

彼女の若いときの映像がビデオで流れていたが、それをみるとなかなか奔放で、けっこうかわいかった…。

常設の浜口陽三版画コレクション(こちらは無料)では、カラーメゾチント技法という銅版画の技法が紹介されていて、これも興味深かった。ちなみに浜口陽三はカラーメゾチント技法の開拓者として世界的に有名な人だとか。