善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

死者の名を読み上げよ

けさの善福寺公園は曇り、きのうあたりから秋の訪れ。
セミの声にかわって秋の虫が鳴いている。
上池につくと、木々の上でギャーギャーと鳥の声。尾っぽの長いのが木々をめぐっている。あとで聞いたら「オナガ」だそうで、警戒して威嚇する声という。
カワセミは、火曜日ときのうは見たがきょうはいない。

先日図書館から借りてきたイアン・ランキン『死者の名を読み上げよ』(ハヤカワ・ポケミス)をようやく読了。図書館の本棚でさびしそうにしていたので借りてきた。

主人公はエジンバラ警察のリーバス警部。何しろ分厚い。ページ数が約540ページ。しかも2段組。
舞台は2005年7月のエジンバラ。7月1日の金曜日から9日土曜日までの1週間が描かれている。
このときスコットランドで主要国首脳会議(G8)が開催(6日~8日)され、主な議題は気候変動とアフリカ諸国の開発支援問題(日本からは小泉純一郎首相が出席)。
しかも7月7日、ロンドンで同時爆発テロが起こり、56人の命が奪われた。

そんな中で、連続殺人や政府高官の転落死などが相次いで発生。少しでも騒乱を抑えたい上層部は、マスコミが騒ぎそうな事件は極力隠蔽しようとする。だが、はぐれ警部のリーバスにはそんな思惑は通用しない。上層部からの圧力がかかる中、捜査に邁進する。そして、意外な結末……。

このとき、スコットランドでは、イラク戦争に反対しG8に抗議するデモが頻発して、警官隊との激突が繰り返されており、エジンバラでは20万人を超える市民による「マーチ」が行われたという。
また、この市民マーチに関連して、世界各地でアイルランドの歌手ボブ・ゲルドフの提唱による「LIVE8(ライブエイト)」というチャリティーコンサートが開かれ(ロンドンではマドンナやエルトンジョン、ポール・マッカートニーらが出演し、日本でも7月2日に幕張メッセで開催)、それらの細かな様子が小説に盛り込まれていて興味深かった。

日本では、洞爺湖サミットにしても何にしても、市民が何かの政治的メッセージを掲げて大規模な街頭活動をするなんて(かつての「安保反対」闘争のように)ほとんど皆無(米軍基地問題で市民が声を上げてる沖縄は別として)だ。ただテレビのワイドショーを見てミーハー気分で選挙で投票するぐらいだが(だから現職閣僚でさえ仕事そっちのけでテレビに出たがる)、イギリスでは政治の担い手は市民なんだ、という意識が根強いのだろうか。

それはそれとして、もはや老境に達して、定年退職間近のリーバス警部と、スコットランドというかエジンバラの風土というか音というか街の空気というか、が絡み合っていておもしろかった(といってもスコットランドに行ったことがないのでホントのところはわからないが)。

だが、やっぱりイギリスの警察小説といえばフロスト警部。作者のR.D.ウィングフィールド氏が亡くなってしまい、あと2作品しか残っていないというが、邦訳の新作はいつ出るのだろうか?