善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

第9地区

上映中の『第9地区』を観る。久々に銀座まで出かけたら、映画館の前にけっこう長い行列ができていてタジログが、よく聞いたらきょうは1日、映画半額の日だった。

巨大宇宙船がヨハネスブルグ上空に停止している。20何年か前にエイリアンがやってきたものの、病気がはやったかなんかでみんな瀕死の状態で地球にきたらしい。エイリアンが出てくる映画にありがちな地球征服の話どころか、逆に地球人にトッつかまって「第9地区」とかいう隔離施設に収容され、なんだかんだ虐待を受けていて、かつての南アフリカの人種隔離政策を思わせる。
エイリアンはその容姿から「エビ」と呼ばれ、牛の頭とかキャットフーズが好物(あるいはそれしか食べさせてもらえないのか)らしい。

これ以上放っておくとスラム化がますます進むというので別の区域に追い立てられることになり、追い立て役のリーダーに指名されたのが本編の主人公。民営化された国連組織の下級役人というような役どころ。完全武装して暴力大好きという感じの傭兵部隊の援護を受けて、立ち退きに出かけていくと……。

いろんな要素をごたまぜにしたような映画で、それはそれでうまく成功しているようだった。ドキュメンタリータッチというか、「私、見たんです」という感じでニュース映像ふうに話は進んでいく。主人公はいかにも小役人ふうに、ヘラヘラしながらエイリアンをあしらおうとする。映像はグロテスクな感じで、ナンカ汚いものを見ているという感じ。食事の直後でなくてよかったな、と思いつつ見ていると、話は意外な展開をみせて、やがて映画の世界に引き込まれていく。

「エビ野郎」と地球人が蔑むエイリアン中に、キラリと光る知識人がいて、その知識人エイリアンが20年かけて集めたという黒い液体を体に浴びると、小役人の主人公の体に大変なことが起きる。

その後は、忌まわしい国家の陰謀あり、ドハデなアクションあり、ロボットパワーの炸裂あり、命をなげうって他人を救うべきかの選択ありで、最後はけなげな子どもエイリアンの機転が窮地を救う。
はじめのころはグロテスクにしか見えなかったエイリアンが、だんだん人間ぽくなって、子どもエイリアンの瞳がつぶらに輝いているように見えるところなんか、ニクイ演出。
今までにない感覚の映画、という意味で新鮮だった。