善福寺公園めぐり

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きのうのワイン+映画「スーパー・チューズデー ~正義を売った日~」

イタリアはシチリアの赤ワイン「パルヴァ・レス・ネロ・ダーヴォラ (PARVA RESNERO D’AVOLA)2018 

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メインディッシュが出る前の写真。

ワイナリーのカルーソ・エ・ミニーニはシチリアの老舗ワイナリー・カルーソと、最新テクノロジーを導入して投資するミニーニの共同経営によるもの。
ブドウ品種のネロ・ダーヴォラはシチリア原産の黒ブドウ品種だという。
 
ワインの友で観たのはNHKBSで放送していたアメリカ映画「スーパー・チューズデー ~正義を売った日~」。
2011年の作品。
原題「THE IDES OF MARCH
 
清廉なイメージと実績で民主党の大統領候補として有力視されるマイク・モリス州知事ジョージ・クルーニー)。選挙スタッフの参謀スティーブン(ライアン・ゴズリング)は、勝敗を分けるオハイオ州予備選を控えたある日、敵対する陣営の参謀から極秘面会を持ちかけられるが…。

原作は2004年の民主党大統領予備選挙に立候補したハワード・ディーンの選挙スタッフだったボー・ウィリモンが同選挙に着想を得て2008年に書いた戯曲「FarragutNorth」。選挙の裏側に渦巻く人間関係と裏切りを描いたサスペンス映画だ。

 
この映画の題名の変遷がおもしろい。
もともとの戯曲の「Farragut Northファラガット・ノース)」という題名は、主人公たちが選挙戦の果てに目指す首都ワシントンの地下鉄の駅名。ファラガットとは南北戦争で勝利に導いた北軍艦隊を指揮したファラガット提督のこと。
それが映画では「THE IDES OF MARCH」となったが、これは古代ローマ315日を意味する。ジュリアス・シーザーが暗殺された日であり、政治的な裏切りを暗示するタイトルといえる。また315アメリカ大統領選挙での候補者選びで重要なオハイオ州予備選挙の投票日であり、映画はこの日をめざしての両陣営の駆け引きや裏切り、陰謀など濃密な人間ドラマを描いている。
ところが邦題は「ファラガット・ノース」でも「三月十五日」でも日本人にはわからんと思ったのか、「スーパー・チューズデー ~正義を売った日~」となった。
しかし、アメリカ大統領選挙の予備選は2月初めにアイオワ州を皮切りに始まり、スーパーチューズディーとは3月第1週の火曜日に行われる予備選の投票日のことであり、315日ではない。この日に民主党11州、共和党14州で一斉に予備選が行われ、次のヤマ場が315日のフロリダ州オハイオ州イリノイ州など州の予備選となる。
だから日本人の知っているアメリカ大統領選の言葉として、どうしても「スーパー・チューズデー」を入れたいのなら、正確には「スーパー・チューズデーの次のヤマ場の選挙」とでもするしかなかっただろう。
 
それともうひとつ、映画を見ていてヘーッと思ったのは予備選の仕組み。
そもそも予備選とは民主党共和党の大統領立候補者がそれぞれ党代表としての指名を勝ち取るための選挙で、州ごとに選挙を行って代議員を獲得していって数が多い方が党を代表する候補者となる。
州によって選挙の形式も異なり、党員集会と呼ばれる方法の場合、近所の学校や集会所に党員たちが集まって各立候補者の有力支持者が応援演説をしたあと話し合いがあり、その場で参加者が投票する。
一方、選挙のように普通に投票する方式でも、党に登録した人だけが投票できるクローズド方式と、党に登録していなくても投票できるオープン形式とがあり、オープンの場合は共和党員であっても民主党の予備選に投票することができる。
オハイオ州はオープン方式なので、共和党の参謀は、本戦に出てくれば自分の党の候補に勝てないような候補をわざと応援して、その候補を勝たせようとしたりする。
 
国の将来をどうするかという主義主張や政策なんかは二の次。とにかく8年間(再選を含めて)自分たちの好き勝手にするにはどうしたらいいか、それだけのために執着する男たちの姿。それを描いたのが本作といえるだろう。