善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

「へそまがりの日本美術」のち「五島うどん」

府中市の都立府中の森公園内にある府中市美術館で開催中の「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」展に行く。
 
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完璧ではない、不恰好なものや不完全なものに心惹かれる「へそまがりな感性」に注目し、もうひとつの日本美術史を俯瞰しようという展覧会。
「おかしい」「へんてこ」「かわいい」、さらには「苦み」や「おとぼけ」など、従来の美術鑑賞の“常識”からはかけ離れたコンセプトで集められた作品が一堂に会している。
もちろん顔ぶれはそうそうたるもので、蕭白、蘆雪、若冲国芳、蕪村、アンリ・ルソーの作品まである。
 
思わず吹き出してしまったのが三代将軍・家光の「鳳凰図」。
たしかに鳳凰というのは実在しない鳥だからどんな描き方をしたっていい。それでも、われわれが常識として思い描く鳳凰の姿というのがあるが、そんな“常識”とはかけ離れた、かわいいかわいい小鳥みたいな鳳凰の姿だった。
これもひとつの発想の自由なんだなと感服した。
 
仙厓義梵は江戸時代の禅僧だが、彼の作品はほとんどマンガの世界。
狩野山雪の「松に小禽・梟」に描かれるフクロウも滑稽だが、枝に止まっている鳥は、このところ毎朝、善福寺公園で見ているジョウビタキのオスに違いない。とぼけたような絵を描いているようだが、山雪の観察眼はたしかで、銀白色の頭、羽の白斑、赤茶色のおなかと、ジョウビタキの特徴をしっかりととらえている。
祇園井特の美人画のリアルなこと。同じ祇園井特の「墓場の幽霊図」もリアルな怖さ。
 
歌川国芳の「荷宝蔵壁のむだ書」はわざとヘタウマに描いたもの。
歌舞伎は江戸時代を通じて幕府からさまざまな取り締まりにあっているが、天保の改革では役者の江戸所払い、役者の似顔絵禁止などのお触れが出た。そこで国芳は、役者の似顔絵を白壁にあたかも釘でひっかいたような落書きタッチで描いている。
「荷宝蔵」は「似たから」をひっかけて幕府が禁止している役者の似顔絵を描いていることをにおわせているんだとか。
「へそまがり美術」は、時の権力者に対する画家の抵抗の産物でもあったようだ。
 
平日の昼間ということもあってか、それほどの混雑はなく。作品をゆっくり鑑賞。その後、バスでJR武蔵小金井駅に向かい、駅近くで昼食。
当初、北口から歩いて78分のところににある「七彩」という手打ちそば屋に行こうと思ったが、ガスの故障で急きょ閉店というので、それならと行ったのが南口すぐのところにある「五島うどん びぜん屋」。
都内では珍しい本格的な五島手延べうどんが食べられる店だとか。
そもそも五島手延べうどんの存在すら知らなかったが、長崎県を代表するうどんであり、讃岐うどん稲庭うどんと並ぶ“日本三大うどん”の1つという。
それどころか、遣唐使の時代に中国から日本に伝わって生まれたのが五島うどんであり、日本のうどん文化は五島から始まったとの説もあるほどなんだそうだ。
細めんで、五島特産の椿油を塗って熟成するのが特徴という。
知る人ぞ知る店なのか、午後1時ごろ行ったがお客さんが次々とやってきていて、常に賑わっている。
ビール中ビン1本と、店の入り口に「水イカ入荷しました」の張り紙があったのでつまみに水イカの天ぷら盛り合わせを注文。
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イカとは要するにアオリイカのことで、活きているときは水のように身が透明に澄んでいるので水イカと呼ばれるらしい。
柔らかくて厚い身質と甘みがあっておいしい。
 
うどんは「ぶっかけ」。冷たいうどんに水菜、海苔、天カス、それに温玉が載って楽しい。
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醤油は「チョーコー醤油」を使っているとのことだったが九州特有の甘い感じの醤油だった。それにしても「チョーコー」とはいったい何か?
醤油をつくっている今の会社の母体が「長崎醤油味噌醸造工業組合」で、略して「長工」→「チョーコー」となったらしい。
 
もうひとつの疑問が長崎は五島のうどんなのになぜ「びぜん屋」なのか?
びぜんといえば備前つまり岡山だが、種を明かせばオーナーの名前が備前さんなんだそうだ。
 
おいしいうどんだった。