善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

有馬温泉 高山荘華野

仕事で神戸へ行く。
夏は札幌に仕事で行ってついでに支笏湖判の温泉に泊まった。
その伝で、今回はせっかく神戸に来たのだからと有馬温泉に宿をとる。

箱根と並んで名前は有名だが、泊まるのは初めて。
宿は「高山荘華野」。
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全17室のこじんまりとした旅館ながら、丘の上にあるので眺めはよく、ラウンジとか廊下には野の花が生けてあり、古美術やアート作品なんかが置いてある。
ピカソの花器、有元利夫の版画、李禹煥(リ・ウーファン)の抽象画などとともに、インドネシアの石のテーブル、アフリカの酋長の杖、なんてのもあった。

アフリカの酋長の杖に花が生けてあった。
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まるで小さな美術館という感じで、通された部屋の掛け軸は昔の人の手紙を表装したみたいで、よーく見てみると、最後の方に「小堀遠州」とある。
マサカと思って二度見したが、どうやら複製ではなく、ホンモノみたい。
それらがすべてさりげなく置かれていて、もったいぶったり構えたりしたところが一切ない。それがいい。だから客も気楽にアート作品に接することができる。

あとで支配人さん?に聞いたら、すべてオーナーの趣味によるものだそうで、「花は野にあるように」の千利休の心がコンセプトだという。

とにかく館内が静かこの上ない。静けさを保つため、12歳以下は入館お断りなのだとか。子どもには悪いが。

お風呂は「金の湯」と「銀の湯」の2種類。
金の湯とは「含鉄-ナトリウム-塩化物強塩高温泉」のことで、もともと無色、透明だが鉄分が多いため湧き出すとともに茶褐色に変わる。強い塩味、苦味、金気を有する。
しょっぱさは日本の温泉の中で一番とも聞いた。

一方の銀の湯は炭酸泉、ラジウム泉のことで、こちらは無色、透明。湯上がり感はさっぱりしている。

気に入ったのが金の湯だ。お湯の温度は熱からずヌルからずで、ちょうどいい。というか、いつまでも入っていられる。ただし、この宿の金の湯は湯船が小さくて3人ぐらいしか入れないが、1人で入っているといつまでも入っていて出たくなくなるから不思議。
癒される、とはこのことだろう。

夕食は個別に部屋が用意されていて、酒は兵庫・加西市の「冨久錦」純米吟醸

夕食のタイトル?は「神無月 秋の彩り」
まずは前菜。
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お造りはタイとシマアジ
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松茸の土瓶蒸し。
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ムカゴの飯蒸し。
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タイのカブト煮。
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海の幸ナベ。
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酢の物。
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香の物と赤だしでごはんのあと、デザート。
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朝食は和食。自分で引き揚げて食べる湯葉がおいしかった。
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翌日、時間があったので温泉街を散歩。
有馬温泉は日本最古の温泉だという。つまり、人間がまだ土を掘る技術を持たない時代から自然と湧き出していたのが有馬温泉だ。技術が発達した現在でも、300mまでの浅い場所から湯を汲み上げているという。
しかも、厚労省の指針により療養泉として指定されている9つの主成分(単純性温泉、二酸化炭素泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉、含鉄泉、硫黄泉、酸性泉、放射能泉)のうち、硫黄泉と酸性泉を除く7つの成分が含まれており、世界的にも珍しい多くの成分が混合した温泉が有馬温泉
そこで不思議に思うのが、普通、温泉って火山地帯で湧き出すものだ。しかし、有馬には火山はない。なのになぜ、こんなにも種類豊富な温泉が出るのか?
どうやらプレートテクトニクスと関連があるらしく、プレートの移動で地中奥深くの岩盤がズレたところから、地中の熱水が上昇して湧き出したらしい。

いくつか泉源があるようだが、ナント神社の中にある泉源。
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散歩中、変わったお地蔵さんを見た。といっても地蔵の姿はなく、「一がんぼさつじぞう」の看板があって、そばに「南無阿弥陀仏」と書かれた石碑があった。
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「一がん」とは「一眼」のことだろうか。
古代において、巨大なふいごで炉を高温にして鉄鉱石なんかを溶かして鉄をつくる古代製鉄が盛んなころ、鍛冶職人たちの祭る神は一つ目だった。それで「一眼」なのだろうか。
有馬温泉には金の湯に代表されるように鉄やマンガンの成分が多く含まれているという。それらは鉄をつくる原料でもある。
ひょっとして古代において有馬温泉のあたりは古代のタタラ製鉄が盛んだったのだろうか? それで一眼地蔵があるのだろうか?

その後、有馬温泉発京都行きの高速バスで京都へ向かう。
(この項、つづく)