善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

キバナコスモスの不思議

公園の片すみに、今年もキバナコスモスが咲いている。
コスモスの仲間で、黄色いというか鮮やかなオレンジ色の花を咲かせるのでキバナコスモス。
目立つ色なので遠くからでもすぐにわかる。
ところが、花の色にひかれて近寄ってジィーッと見ると、ナント、花の中にもうひとつ花がある。どーいうこと?
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大きく広がる黄色の花びらは「舌状花」と呼ばれるもので、花といえばわれわれシロウトはこの舌状花を花と呼ぶ。
舌みたいにベロンとなっているから舌状花ということか。
さらに真ん中をよーく見ると、小さな花らしきものが咲いていて、これは筒みたいになっているから「筒状花」と呼ばれるものなんだそうだ。
つまりキバナコスモス(に限らずコスモスはみんなそうらしいが)は舌状花と筒状花の2種類の花からできているというわけなのである。

何でそんな二度手間というか、めんどくさいことをするのか?
花に限らず生物は自分の命を次の世代につないでこそ生物としての存在意義がある。
人間の場合は男女が出会い、愛し合う結果、愛の結晶である子どもが生まれ、次代に命をつないでいく。
植物にも生殖は欠かせないものであり、舌みたいにベロンと広がる舌状花は、その大きくてハデな色でもって虫を呼び寄せる。
マッタマシタと、真ん中の筒状花からのびるのが雄しべと雌しべで、雄しべから出る花粉を蜜を吸いにきた虫に運んでもらい、雌しべに受粉させて次代への命のリレーを果たす。
動くことのない植物が、動き回る動物をうまく利用して子孫繁栄を図っているのだ。

しかもキバナコスモスは近親交配となる自家受粉を避けるための巧みな戦術も持ち合わせている。
小さい筒状花の真ん中から、茶色いエンピツの先っちょのような、ロケットのようなのがのびているのが雄しべ。
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キバナコスモスは最初に雄しべが成熟してのびてきて、花粉を出す。雄しべが花粉を出し切ると、それを見計らって今度は雌しべが成熟してニョロッとのびてくる。
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これが自家受粉を避けるための時間差戦術だ。

蜜を吸うためにやってきた虫は、花粉を体につけて花の中を移動するが、雌しべがまだ成熟していない段階では受粉に至らず、別の花に飛んでいって成熟した雌しべに花粉をプレゼントし、受粉のお手伝いをするというわけだ。
何と賢いキバナコスモス。
だが、同じようなことはほかの花もやっていて(冬に花を咲かせるロウバイも同じ)、何と賢い植物よ、といったほうが正確だろう。

ツマグロヒョウモンのオスとメスが少し離れて花に止まっていた。
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やがて同時に舞い上がった2羽のチョウは、もつれ合いながら茂みの中に消えていった。
ちょいと色っぽい秋のひとコマ。