善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「恋はデジャ・ブ」「童年往事 時の流れ」

南アフリカの赤ワイン「スペシャル・エディション・ピノタージュ(SPECIAL EDITION PINOTAGE)2021」

(写真はこのあと豚ステーキ)

ワイナリーはレオパーズ・リープで、南アフリカの固有品種ピノタージュ100%。

ピノタージュはピノ・ノワールとエルミタージュ(サンソー)の交配品種で、1925年、南アフリカの大学でブドウ栽培学を教える教授によってつくられ、南アフリカを代表する赤ワインの品種となった。

熟した黒系果実とスパイスのニュアンスが溶け込んだ香り、果実味が前面に出た味わいと滑らかなタンニンが魅力の1本。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「恋はデジャ・ブ」。

1993年の作品。

原題「GROUNDHOG DAY」

監督・脚本ハミルド・ライミス、出演ビル・マーレイ、アンディ・マクドウェル、クリス・エリオットほか。

フランス語版タイトルは「UN JOUR SANS FIN」。終わりのない1日。 

 

高慢で自己中心的な男が、朝起きるときのうの朝と同じ時刻で、1日だけ過去に戻るという“時間のループ”に閉じ込められるが、何度も人生を繰り返して人々と触れ合ううち、他人の心を大切にするようになって恋も成就するラブ・コメディ。

 

人気気象予報士のフィル(ビル・マーレイ)は、テレビ番組のプロデューサーであるリタ(アンディ・マクドウェル)とカメラマンのラリー(クリス・エリオット)とともに、毎年2月2日に行われる春の訪れを予想する天気占いの行事である「グラウンドホッグデー」を取材するため、ペンシルベニア州の田舎町パンクスタウニーを訪れる。

無事に取材を済ませ、早く都会に戻りたいたフィルだったが、吹雪が町を直撃し、足止めを喰ってしまう。翌朝、午前6時にフィルが目を覚ますと、その日はまたしても2月2日のグラウンドホッグデーだった。

フィルは昨日と同じ振る舞いを繰り返す人々や仕事仲間に既視感を覚えつつ、2度目の取材を終えるが、翌朝もまた同じ2月2日が繰り返される。そして翌日もまた。理由も分からず時間のループに留め置かれた彼は・・・。

 

原題の「GROUNDHOG DAY」とは、毎年2月2日の聖燭節のとき、アメリカやカナダの各地で行われる伝統行事。日本ではこのころが暦の上での立春となるが、ヨーロッパでも「春の訪れ=立春」を祝う古くからの習慣があり、これとキリスト教が習合して、この日をクリスマスシーズンの終わりということにして、装飾品を取り外し、クリスマスツリーを燃やしたりしている。

アメリカの風習として、同時に行われるようになったのがグラウンドホッグデー。

アメリカに広く生息するマーモットの一種であるウッドチャック、別名グラウンドホッグを使って、春の到来時期を予想する天気占いの行事。冬眠から目覚めたグラウンドホッグがどのように動いて自分の影を見るのかで春の訪れを占うのだとか。

 

このグラウンドホッグデーの取材のため訪れた気象予報士の主人公が、時間のループに閉じ込められて24時間を何度も何度も繰り返す羽目になるのだが、当初の脚本では数千年以上続くという設定だったという。

繰り返されるのは前日とまったく同じ現象であり、たとえば朝、ホテルの食堂に行けばウェイトレスから「コーヒーはいかが?」といわれたり、外に出れば昔の友人という保険会社のセールスマンが保険加入を勧めたりするのだが、主人公は繰り返される同じ現象の外にいる唯一の存在なので、勝手なことをいったりやったりすることができる。

当初は自暴自棄になるが、やがてその立場を利用して相手をだましたり、現金輸送車からコッソリ大金を盗んだり悪いこともするのだが、そんな毎日では人生が虚しくなるのに気づいた彼は、自己中心的だったのを反省して、他人を幸せにしてこそ自分も幸せになるということに目覚め、ヒロインの愛をも勝ち取るのだった。

 

現在66歳のアンディ・マクドウェルがこのとき35歳。相変わらず美しい。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のCSで放送していた台湾映画「童年往事 時の流れ」。

1985年の作品。

原題「童年往事」

監督ホウ・シャオシェン、出演ユー・アンシュン、シン・シューフェン、ティエン・フォン、メイ・ファンほか。

先日に続き台湾映画界を代表するホウ・シャオシエン監督作品で、同監督の自伝的映画。1940年代末から60年代にかけての激動する台湾を舞台に、一少年の目を通して時代の変化をみつめる。

 

日中戦争終結後の中国で、1946年6月に始まった国民党と共産党の内戦は、当初はアメリカの全面支援を受けていた国民党が圧倒的に優位だった。共産党の紅軍は東北地方(旧満州)を拠点にしていて、反攻に転じるのは1948年になってからだった。

中国本土がまだ国民党の支配下にあった1947年、広東省に生まれたアハは、1歳のときに一家で台湾に移住(実際のホウ・シャオシェンも、父は公務員(広東省の教育課課長)で、先に父が台湾に渡り、その後、家族とともに台湾に移住している)。

やがて紅軍の勢力が優勢となり、1949年、国民党は台湾に逃れ、本土奪還をめざすようになる。“外省人”であるアハの両親は、「大陸反攻」を信じながら、相次ぎ病死する。祖母や兄姉と暮らすアハは、荒れて事件も起こすが、さまざまな体験を経て成長し、やがて両親たちとは違う“台湾人”としてのアイデンティティにめざめていく・・・。。

 

両親の死や地域の人々との触れ合い、路地裏の遊び、教師への反抗、初恋、祖国である中国本土への望郷など、さまざまな体験をへて成長していく少年の姿を、淡々と描いていく。

その風景は戦後の素朴な日本人の暮らしとも重なり、観ていて、小津安二郎の映画の少年版を見ているような感覚にとらわれたのは、本作の監督と小津監督との間にどこか通じる何かがあったからであろうか。