善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「ゲティ家の身代金」

チリの赤ワイン「ヒューソネットカベルネ・ソーヴィニヨン(HUSSONET CABERNET SAUVIGNON)2019」

(写真はこのあとサーロインステーキ)

イタリアのアンティノリがチリで手がけるワイナリー、アラス・デ・ピルケのワイン。

アラス・デ・ピルケはチリ・アンデス山脈のふもとで牧場とワイナリーを経営していて、「アラス」とはスペイン語で「馬牧場」という意味。1892年に設立されたチリで最も歴史あるサラブレッド牧場でもあるという。

ワイン名の「ヒューソネット」は、この牧場で育ったアメリカ生まれの競走馬ヒューソネットにちなむもの。

この馬は、現役時代は7回走って条件戦を2勝しただけの平凡な成績だったが、種牡馬入りしてからは成績優秀な子どもを多数輩出。G1馬30頭とチャンピオン馬20頭を送り出したという。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ・イギリス合作の映画「ゲティ家の身代金」。

2017年の作品。

原題「ALL THE MONEY IN THE WORLD」

監督リドリー・スコット、出演クリストファー・プラマーミシェル・ウィリアムズマーク・ウォールバーグ、チャーリー・プラマーほか。

 

1973年に起こったアメリカの大富豪ジャン・ポール・ゲティの孫が誘拐された事件を映画化したサスペンスドラマ。

 

1973年、石油王として巨大な富を手に入れた実業家ジャン・ポール・ゲティ(クリストファー・プラマー)の16歳の孫ポール(チャーリー・プラマー)が、イタリアのローマで誘拐され、母親ゲイル(ミシェル・ウィリアムズ)のもとに1700万ドルという巨額の身代金を要求する電話がかかってくる。

しかし、希代の富豪であると同時に守銭奴としても知られたゲティは身代金の支払いを拒否。彼は、元CIAで現在はゲティのもとで中東の業者との交渉人をしているチェイスマーク・ウォールバーグ)を呼び寄せ、なるべく費用をかけずに孫を取り戻せと指示する。

ゲイルは息子を救うため、世界一の大富豪であるゲティとも対立しながら、誘拐犯と対峙することになるが・・・。

 

誘拐犯とも、義父であるはずの大富豪とも戦わなければならなかった女性の苦悩を描く。

母親のゲイルの描き方はかなり創作が入っているだろうが、大富豪ゲティの守銭奴ぶりは史実に近いようだ。脚色なんかしなくても、彼の一代記をそのままなぞるだけで立派な映画ができる。

1892年生まれのゲティは1966年にギネスブックに世界一の富豪と記載されたほどの大金持ち。石油採掘で財を成し、中東での採掘権を獲得して石油王として世界に君臨するようになる。しかし、かなりドケチだったみたいで、ホテルに泊まってもルームサービス代をケチって、宿泊中の洗濯物はバスルームで自分で洗ったとか、来客に自分の家の電話をタダで使わせないため公衆電話を置いた、10年以上持つ靴やネクタイしか買わなかった、などの逸話にことかかない。

世界恐慌時には、全従業員を解雇したあと安く雇い直して自分の利益を守った。第2次世界大戦前、ドイツにナチス政権が誕生すると高官たちに取り入り、オーストリア併合時にユダヤ系のロスチャイルド家の資産を狙う行動に出たりもしている。

 

孫のポールが誘拐されたときも、交渉の末、犯人は要求額を1700万ドルから320万ドルに下げてきたが、それでもゲティは首を縦に振らない。ポールの耳が切り落とされて送られてきてようやく身代金の支払いに同意したものの、彼が拠出する金額は220万ドル。

なぜならばアメリカの税制では誘拐事件の身代金として220万ドルまで税金の控除が認められていたからで、差額は息子への貸付金として処理し、金利は4%だったという。

 

一方でゲティは美術品の収集家としても知られていた。芸術に関心があったからかというとこれも金儲けに関係していて、あくまで投資の対象としてだった。

彼はいう。「私は物が好きなんだ。オブジェや古代の遺品や絵画は目の前にある姿のままで決して変わらないからね」。それで彼は物品である美術品や骨董品を山ほど集め、自分の資産としていた。

 

この映画、もともと富豪のゲティ役はケビン・スペイシーが演じていて、ほぼ全編を撮り終えてたところで彼の性的暴行事件が発覚し、降板。公開まで1カ月しかなかったが急きょ代役にクリストファー・プラマーを立て、スペイシーの出演シーンを全て撮り直した。

ところが、映画の完成後にまたひと騒動が起こる。

撮り直しのため再招集されて主役の母親ゲイルを演じたミシェル・ウィリアムズのギャラが、全米俳優組合基準の標準賃金(日給80ドル)によりたったの1000ドルなのに対して、元CIAの役をしたマーク・ウォールバーグのギャラが150万ドルだったと報じられ、ハリウッドの男女間のギャラ格差に大ブーイングが起こった。

結局、ウォールバーグは再撮影のギャラをセクハラ被害者のための支援基金「タイムズ・アップ(Time’s Up)」に全額寄付し、監督のリドリー・スコットも50万ドルを「タイムズ・アップ」に寄付することを発表して事態の鎮静化を図ったそうだが・・・。