善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「マルコヴィッチの穴」ほか

フランス・ボルドーの赤ワイン「ムートン・カデ・セレクション・ルージュ(MOUTON CADET SELECTION ROUGE)2018」

格付け第一級シャトーを所有するバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドが手がけるムートン・カデの上級シリーズ。厳選したブドウのみを使用。しなやかさと力強さを伴う飲みごたえのある味わい――と宣伝文句にある。

メルロ、カベルネ・フランカベルネ・ソーヴィニヨンブレンド

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたアメリカ映画「マルコヴィッチの穴」。

1999年の作品。

原題「BEING JOHN MALKOVICH」

監督スパイク・ジョーンズ、脚本チャーリー・カウフマン、出演ジョン・キューザックキャメロン・ディアスキャサリン・キーナージョン・マルコヴィッチチャーリー・シーンほか。

 

ワザはピカイチなのに、キワモノばかりやってるからか売れない人形遣いのクレイグ(ジョン・キューザック)は、新聞の求人欄を見てマンハッタンにあるオフィスビルへと向かう。応募した会社は7と1/2階にあり、そこはエレベーターを7階と8階の間で非常停止させ、扉をこじ開けて入ると、かがんで歩かないといけないほど天井が低いフロアだった。

その会社で文書整理の仕事を得た彼は、ある日落としたファイルを拾おうとキャビネットを動かし、偶然壁に小さなドアを発見する。ドアを開けて穴の中に入っていくと、たちまち吸い込まれていき、それは俳優ジョン・マルコヴィッチジョン・マルコヴィッチ本人)の脳の中へと続く穴だった。

この穴に入れば、誰でも15分間マルコヴィッチを体験できる。それを知ってマルコヴィッチの脳に入った妻ロッテ(キャメロン・ディアス)は、自分の内なる男性に目覚め性転換願望を抱く。クレイグは、同じフロアの美人OLマキシン(キャサリン・キーナー)とマルコヴィッチの脳内体験の商売を始めるとこれが大当たり。やがてマルコヴィッチをめぐってクレイグ、ロッテ、マキシンの不思議な三角関係ができ、ついには自分の異変に気づいたマルコヴィッチも動き出してくるが、マルコヴィッチの脳内に入り込んだクレイグは彼を操ろうとする・・・。

 

とにかく笑えるが、後半は理解不能にもなる不条理劇。一番不条理なのは、マルコヴィッチ本人が穴に飛び込んで自分の脳内に入っていく下り。

そんなバカなと思うかもしれないが、実は同じような話が落語にあり、それは「あたま山」だ。

けちん坊の人がサクランボを食べて、もったいないからとタネも食べたら、体内の温かみで芽が出て成長し、頭を突き抜けてサクラの木なった。春になると見事なサクラが咲き、花見客がどっと押し寄せて騒ぐものだから、「うるさいっ」てんで木を引き抜くと頭の真ん中に大きな窪みができた。雨が降って窪みに水がたまり池になった。そこへまた人が集まってきて釣りをする様子がうるさいものだから、「こう騒々しいんじゃとてもたまらない」と自分の頭の池に身を投げた、という噺だ。

 

不条理のおもしろさは理屈では説明できないが、議論のテーマにして侃々諤々するにはもってこいかもしれない。

人形遣いのクレイグが動かす人形がすばらしくて、まるで生きてるみたい、いや生身の人間以上に妖しげだった。

とくに映画が始まって早々、クレイグがマリオネットを操るシーンがあって、糸で操られる人形と操るクレイグがそっくりなのにびっくり。このシーンは、この映画で描かれる人が人を操ることの不気味さを暗示しているようだった。

さらに、クレイグに脳を支配され操られるようになったマルコヴィッチが、俳優をやめて人形遣いとなり、バレエの舞台で踊り子たちと人形が一緒に踊るシーンも圧巻。あれは人形ではなくて生きている人間が踊っているに違いないと、見ているこっちまで映画の監督に操られたみたいになってしまった。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「ブレックファスト・クラブ」。

1985年公開の作品。

監督・脚本・製作ジョン・ヒューズ、出演エミリオ・エステベス、ポール・グリーソン、アンソニー・マイケル・ホールジャド・ネルソンモリー・リングウォルド、アリー・シーディほか。

 

高校生同士の友情を描く青春映画。

同じ高校の生徒だが、まるでタイプが異なり出会うこともなかった高校生が5人、懲罰登校を命じられて休日の朝7時から図書室に集合させられ、「自分とは何か」をテーマにした1000ワード以上の作文を課せられる。

体育会系のアンドリュー、ガリ勉のブライアン、不良のジョン、金持ちの娘でお嬢さまのクレア、暗くて地味なアリソン。

はじめは無視し合ったり敵対したりしていた5人だったが、自分たちの家族や学校に対する鬱屈した思いを語り合ううち、次第に心を通わせていく・・・。

 

映画のタイトルである「ブレックファスト・クラブ」とは、直訳すれば「朝食クラブ」だが、早朝から補習授業をさせられることをいうらしい。

映画の冒頭、デヴィッド・ボウイのメッセージが流れる。

1971年に発表した「ハンキー・ドリー」というアルバムに収録されている「チェンジス(Changes)」という曲の歌詞からの引用で、「きみが唾を吐きかけるようなガキどもが自分たちを変えようとしているとき、どんな説教をしたって意味ないよ。自分たちの変化は自分たちでちゃんとわかってるんだから」というようなことをいっているらしい。

この映画のテーマをいいあらわしている。