善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「藁にもすがる獣たち」ほか

フランス・ボルドーの赤ワイン「シャトー・ジレ・ルージュ(CH.GILLET ROUGE)2020」

シャトー・ジレは5世代に渡ってボルドーの地でワインをつくる老舗シャトー。

ブドウの栽培に始まってワイン醸造まで、なるべく機械を使わず、伝統的な手法にこだわっている“自然派シャトー”という。

メルロ、カベルネ・ソーヴィニヨンカベルネ・フランブレンド

ふくよかでなおかつフレッシュ、渋みもほどほどの口当たり。

 

ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していた韓国映画「藁にもすがる獣たち」。

2020年の作品。

監督キム・ヨンフン、出演チョン・ドヨンチョン・ウソン、ペ・ソンウ、シン・ヒョンビンほか。

 

日本の作家・曽根圭介の同名小説を韓国で映画化し、カネに取りつかれ、欲望をむき出しにした者たちがぶつかり合う姿を描いたクライムサスペンス。

多額の借金を抱えていた恋人ヨンヒ(チョン・ドヨン)が失踪し、保証人となっていたため借金の取り立てにあっている出国管理局で働くテヨン(チョン・ウソン)。一方、ヨンヒは、暗い過去を精算して新たな人生を始めようとしていた。

さらに、事業に失敗して娘の学費すら払えなくなりアルバイトで食いつないでいるジュンマン(ペ・ソンウ)、そして、キャバクラで働きながら借金を返す毎日だが家に帰ると夫から暴力を受けているミラン(シン・ヒョンビン)。

ある日、ジュンマンはアルバイト先のロッカーの中に忘れ物のバッグを発見する。その中には10億ウォンもの大金が入っていた。地獄から抜け出すために藁にもすがりたい、欲望に駆られた獣たちの運命は・・・。

 

10億ウォンは日本円にしたら約1億円。最近、山口県で、町が新型コロナウイルス対策関連の給付金を誤って1世帯に4630万円を振り込んでしまい、思わぬ大金を手にした男が、ミスと知りながら大金を自分のものにしようとして逮捕される事件があったばかり。

うっかり目の前に大金を目にすると、何をするかわからない人間の欲望の深さ、一瞬にして人生を踏み外すことの怖さを描く映画だった。

 

ついでにその前に観た映画。

民放のBSで放送していたアメリカ映画「デッドマン・ウォーキング」。

1995年の作品。

原題「DEAD MAN WALKING」

監督・脚本ティム・ロビンス、出演スーザン・サランドンショーン・ペン、ロバート・プロスキー、レイモンド・J・バリーほか。

 

刑務所で死刑囚の面会を続けている修道女ヘレン・プレジャンのノンフィクション作品(「デッドマン・ウォーキング」)の映画化。

題名の「デッドマン・ウォーキング」とは死刑囚が独房から死刑執行室に向かう姿を差す刑務所内の隠語で、「死刑囚が行くぞ」を意味する。

 

ニューオーリンズで貧しい黒人のために活動していたシスター・ヘレン(スーザン・サランドン)は知人から死刑囚との文通を持ちかけられる。その死刑囚マシュー(ショーン・ペン)は、共犯の男とともに若いカップルを襲って女性を強姦したうえに2人を殺害していた。文通をきっかけに面会を重ね、何とか死刑の執行を回避させ、彼の命を救おうと奔走するようになる。

ヘレンはまた、被害者の家族の救済にも取り組んでいくが、結局、訴えは却下され、死刑執行が決まる・・・。

 

ヘレン・プレジャンは、アメリカで死刑制度廃止委員会の全国会長を務め、死刑囚の支援や被害者家族の救済のための活動をしているという。死刑制度に反対するだけでなく、犯罪被害者に寄り添う活動も同時に行っているようだ。

 

いわゆる先進国の中で、死刑制度を存続させていまだに執行を続けている国は日本とアメリカのみという。そのアメリカでも、連邦レベルでの死刑は2020年まで17年間行われていなかった。

トランプ時代になって、同大統領の指示で再開されていたが、大統領選挙でバイデン氏は連邦政府レベルでの死刑廃止を公約。死刑囚には仮釈放のない終身刑を適用するとの明確な姿勢を示していて、検事出身のカマラ・ハリス副大統領も、検事時代から死刑には反対の立場を公言しているといわれている。

となると残るのは・・・?

 

民放のBSで放送していたインド映画「弁護士ジョリー」。

2017年の作品。

監督スバーシュ・カプール、出演アクシャイ・クマール、フマー・クレイシー、ソゥラブ・シュクラーほか。

 

弁護士のジョリー(アクシャイ・クマール)は、インドのラクナウで大物弁護士事務所の万年助手に甘んじている。何とか自分の事務所を持ちたいと願いながらも資金が足りず、アルバイトに明け暮れる毎日だ。

ある日、夫が警察に殺されたヒナという身重の女性が警察相手に裁判を起こそうと相談にやってきた。ジョリーは彼女から大金をもらったものの、何もしないで放置していると、それを知って悲観したヒナは自殺してしまう。

罪悪感に苛まれたジョリー。彼女が訴えようとしていた事件を改めて調査し、彼女の夫を謀殺した悪徳警官に対する訴訟を開始する・・・。

 

アジアの汚職度ランキングのトップはインドだそうで、公共サービス利用者の10人に7人に贈賄の経験があったというデータもあるほど。警察の汚職もひどいらしい。

映画のオープニングですでに、のけ反るようなシーンが出てくる。

インドでは10年生(日本の高校1年に相当)修了時に進級のための全国いっせいのテストがある。ジョリーは拡声器を使って堂々とカンニングを指導して、親たちからカネをもらって事務所開業資金に当てていた。

いくら何でも公然とカンニングして許されるものなのか?と思ってしまうが、実際、インドではカンニングが白昼堂々と行われていて、親たちが学校の壁をよじ登り、自分の子どもにカンニングペーパーを渡そうとしている姿がテレビで映し出されたりしている。そうした白昼堂々のカンニングを、賄賂をもらった警官が黙認しているとの報道もあった。

 

法廷シーンの最後の場面で、悪徳警官に味方した大物弁護士が、窮地に立ちながらも最後の悪あがきをしようと立ち上がりかけるが、それを止めたのは車イスに乗って半身不随のまま大物弁護士の隣にいたその弁護士の父親だった。

そういえばジョリーが自分の悪事を悔いて、正義の弁護士として働こうと決意したのも父親からの叱咤激励だった。

インドでは今も家父長制の名残があり、父親の力が強いんだな、と思わせるシーンだった。