善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

ウマノスズクサとジャコウアゲハ

日曜日朝の善福寺公園は曇り。どんよりした雲。いっとき雨がぱらつくが、やがてやむ。

 

公園内の石段を登っていたら、足元に枯れ葉みたいな小さなチョウ。

コノハチョウ?

ジッとして動かないから、歩いている人に枯れ葉と間違われて踏んづけられないか心配。

 

けさのカワセミは上池にH子らしいメス。

 

上池の端の方にいたのは、おとといケンカしていたオスのブンジ(B2)か、三郎か。

 

先日のとは違うハナショウブが咲いていた。

 

葉っぱからぶら下がっているのは枯れ葉のかたまり?と思ったら、つついたら動いたからミノムシのようだ。

うまい具合に擬態している。

 

タカの仲間ツミが公園内に巣をつくって抱卵しているらしい。

近くからだとよくないので、遠くのほうからそっと一瞬だけながめるだけにしているが、ここ数日はそんな気配はなかった。

しかし、けさ遠くから見たら、どうやらメスが卵を温めているようだ。

 

葉っぱの上にいるカミキリは、以前にも見たことのあるナガゴマフカミキリのようだ。

黄褐色と灰色のまだら模様に、細かな黒点を散りばめたカミキリムシ。樹皮にとまっていると保護色になって見逃してしまうが、緑の葉っぱの上だとすぐに見つかる。

長い触角の曲がり具合が見事だ。

 

サシガメが針のような口吻の先に白いものをくっつけている。

獲物の幼虫の体液を吸いつくしたあとだろうか。

 

やけに平べったくて大きいテントウムシ

しかし、テントウムシにあるはずの丸い紋がない。

テントウムシに擬態した虫かな?

いえいえ、立派なテントウムシで、カメノコテントウムシ

日本で最も大きいテントウムシだそうで、成虫、幼虫ともにクルミハムシやヤナギハムシなどハムシ類の幼虫を食べるので益虫。

固い上翅がカメの甲羅みたいに見えるので亀の子テントウムシ

危険を察知すると黄色い部分から赤い汁を出すというが、ジッとながめていただけなので何ごともなし。

 

毎日いつ羽化するかと楽しみにして観察していたジャコウアゲハのさなぎは、いつの間にか羽化してしまっていて、羽化の様子が見られず残念だなーと思いながら歩いていると、ジャコウアゲハの幼虫を発見。

ウマノスズクサの葉っぱを食べていた。

しかもかなり大きくて終齢幼虫に近い感じ。

黒褐色~黒色で、全身に太い突起があり、突起の先端は赤い。白色の帯があるが、まるで砂糖を溶かしたみたいで甘そうな感じがする(もちろん甘くない)。

 

アゲハチョウの仲間は、それぞれの幼虫が特定の植物だけを食べて成長する。そうした植物を食草という。

たとえば、ナミアゲハはミカン科の植物、キアゲハはセリ科の植物、またジャコウアゲハはウマノスズク科の植物を食べ、ほかの植物は餓死してでも食べないという。

なぜこんなにも偏食なのかといえば、ちゃんと理由がある。

 

植物は、昆虫や動物に食べられないようにするためさまざまな防御手段を身に着けていて、茎や幹にトゲを生やしたり、葉の縁にギザギザをつけて食べられなくするほか、葉に毒を蓄えて防御したりしている。

地球上に存在する昆虫の過半数は植物を食べる植食性昆虫といわれるが、植食性昆虫は体が小さく、限られた解毒能力しかもたないため、ごく一部の植物しか食べることができないという。

研究者の説によれば、原始的なアゲハチョウの種はウマノスズクサ科植物を食べていたという。ウマノスズクサは有毒成分を含んでいて、それによって捕食者から自分の身を守っているのだが、アゲハチョウは毒を解毒して食べることができたのだろう。

その後、進化の過程で自分が持つ解毒能力をほかの植物に転用することが可能になっていったようで、クスノキ科に移ってアオスジアゲハ族が生まれ、ミカン科に移ったものはアゲハチョウ族として発展し、最後にミカン科からセリ科植物に食草転換して、北半球に大発展を遂げたキアゲハ亜属が出現したという。

 

幼虫はゆっくりとしか移動できず、自分で食草を探し出すのは極めて困難。だから、飛ぶことができる母親のチョウは正確に食べられる植物を識別して、めざす場所に産卵しないといけない。つまり、産卵する植物を間違えると生まれた幼虫は飢え死にしてしまう可能性が大なのだから、アゲハチョウの仲間は、祖先から受け継いだ解毒の遺伝子を巧みに転用していって、新たな食草を開拓していったのだろう。

母親のチョウは、産卵場所を間違えないようにするためどうしているかといかと、前脚の先端に、人間の舌のように植物に含まれる化合物を「味」として認識できる感覚器があり、それで探ることで幼虫が食べられる植物であるかどうかを確認しているという。

 

原始のアゲハチョウはウマノスズクサ科を食草にしていたとするなら、今もマノスズクサ科を食草としているジャコウアゲハは、原始の姿をとどめたチョウといえるのだろうか。

ジャコウアゲハの場合、幼虫はウマノスズクサの毒を解毒できると同時に、毒を体内に蓄積できるようになっていて、毒は成虫になっても体内に残っている。

このため、ジャコウアゲハが体内に毒を持っていることを知っている捕食者は、ジャコウアゲハを餌食にしようとはしない。

つまり、解毒能力によってウマノスズクサを自分一人で独占できる上、毒を体内に持つことで捕食者からも逃れている、というわけで、原始的といいながら、何て高等戦術だろうか。

 

しかし、そんなのは七面倒くさいと、もっと安直な道を選んだほかのアゲハチョウのほうが、より時代の先を行ってるのかもしれないが。