善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

藍と青石の国・徳島散歩/後編

仕事で徳島に行ったので寄り道して「うだつの町・脇町」を散歩した続き。

夕方、徳島市に戻り、夜は駅近くの「食彩 遊真」という居酒屋がおいしそうだったので、イッパイ。

グラスビールのあとは日本酒。

飲んだ酒は、徳島に敬意を表して「芳水 純米吟醸」、「渡船」という酒米が珍しくて滋賀の「七本槍 純米渡船」、徳島の「鳴門鯛 純米辛口」、やはり徳島の「おでんでん 純米吟醸」。「おでんでん」とは“おでんの友”という意味ではなく、「お殿田」と書くそうだ。

 

料理はまず、突き出し。

ゼンマイのごまだれ和え。

 

刺身の盛り合わせ。

鯛は、こちらでは明石の鯛ではなく鳴門の鯛。

 

ジャンボ椎茸の海老射込み揚げ。

 

阿波牛の炙り牛スジ。

 

フルーツトマトの塩麹ドレッシング。

 

キャベツのお浸し。

 

イカげその酒盗炒め。

 

阿波尾鶏(あわおどり)の天然塩焼き。

 

〆は徳島の特産品、すだちたっぷりのすだちラーメン。

たくさん飲んで食べて、おいしい夜だった。

 

2日目の朝はホテルでビュッフェスタイルの朝食。

 

仕事のあと、夕方の飛行機まで時間があったので徳島城へ。

ハクセキレイがやってきていた。

吉野川河口の三角州に位置する標高61mの渭山(いのやま)に、豊臣秀吉から阿波国を与えられた蜂須賀正勝(子六)の子、家政が秀吉の命で築城したのが徳島城

城跡は国指定の史跡で、日本100名城の1つ。

「徳島」という地名も、この三角州が“島”にたとえられたことに由来しているといわれる。

蜂須賀氏は子六の時代から秀吉の忠実な家臣だったが、初代城主となったのが家政。関ガ原の戦いでは徳川方で出陣。また大坂夏の陣でも戦功をあげ、新たに淡路国を与えられた。その後、阿波・淡路両国の城主として約290年間治め明治に至ったという。

 

今は石垣しか残っていないが、「阿波の青石」と呼ばれる緑色片岩で築かれた。

緑色片岩といえば、先週、日本三大秘境の1つで、徳島県高知県の県境に近い祖谷(いや)を訪れたときに至るところで目にしたのが緑色片岩、すなわち阿波の青石だった。

川床も青石で、吉野川はブルーグリーンに輝く川だった。

ということは徳島ではいたるところで青石が採れるのか。ひょっとして祖谷で採れた青石が徳島城の石垣になっているのだろうか?

 

なぜ青石ができるかというと、日本列島には、西南日本の九州東部から関東へと横断する世界第一級の断層帯中央構造線が走っている。その中央構造線の外帯側に三波川(さんばがわ)変成帯と呼ばれる地質帯があり、これが地殻変動により互いに摩擦を起こし、結晶片岩となり、緑色片岩(青石)を生み出しているという。

三波川変成帯は関東から九州まで続いている地質帯だが、地形や地質の関係か、あるいは摩擦の具合によるものなのか、良質の青石ができるのは徳島県などの四国だけ。四国のなかでも、祖谷をふもとに持つ剣山から徳島市眉山にかけてが最も良質の青石を産するという。

 

徳島は藍の一大生産地としても全国的に知られるが、昔の殿さまが奨励したことも大きいだろうが藍の栽培には土も関係していて、阿波の青石が貢献しているのではないか、という話を聞いたことがある。

 

吉野川流域はしばしば川が氾濫することでも知られる。青石は吉野川にも流れ込み、それで吉野川は青緑色しているのだが、太古の昔から川に流れ込んだ青石はやがて細かく砕かれて砂となり、流域の土とも混じり、青石に含まれる豊富なミネラル分が土を豊かにし、藍の栽培にもよい影響を与えたのではないか、というのだ。

 

「青は藍より出でて藍より青し」という言葉がある。

弟子のほうが師よりも優れていることのたとえといわれるが、青石の青は藍の青となり、より青さを際立たせているのかもしれない。

 

ブルーグリーンの石。これぞ青石だ。

 

4枚の青石を組み立てた井戸が残っていた。

 

城山の山頂の本丸へと続く石垣。

今はかなり草木に覆われて、風化が進んでいるが、城が築かれた当時はもっと青さが際立っていて、徳島城は“青い城”だったかもしれない。

 

蜂須賀家の家紋は「丸に卍」。

卍は梵字で仏教と関わりがあり、家祖の蜂須賀子六は信心深かったのか。

 

徳島城には全国唯一の現存遺構があり、それは「舌石」と呼ばれるもの。

今はJRの線路となっているが、かつての寺島川沿いの石垣には「屏風折れ塀」と呼ばれる敵を攻撃するための折り曲がった塀があり、この折塀を支えるためにつくられたのが「舌石」。石垣から舌のように突き出ているのでこう呼ばれる。

 

徳島城から歩いて眉山に向かう。

途中の吉野川。やっぱり緑青色している。

 

ケーブルカーで眉山(標高290m)山頂へ。

眉山は「阿波の青石」の産地でもあり、ここで採れた青石が徳島城の石垣となっているという。

ケーブルカーの発着場でもある「阿波おどり会館」では、毎日、阿波おどりの実演があるという。平日でも昼間から阿波おどりを踊って見せてくれる。よほど徳島市民は阿波おどりが好きなんだろうけど、残念ながらこの日は、関係者にコロナ感染者が出たというので中止になっていた。

踊るアホウもコロナには勝てない。

 

山頂からの眺め。

写真中央の森が徳島城跡。

町のど真ん中にお城があるのがよく分かる。

 

山頂の建物の外壁も青石。

15分おきに出ているケーブルカーで下山。

 

県庁所在地の中心部なのに、町は閑散。シャッター街化している通りも。

歩いているのは高校生ばかり。

 

それでも、あちこちに阿波おどり

空港にも、徳島市出身の漫画家・竹宮恵子原画による阿波おどりのステンドグラス。

徳島空港(愛称は徳島阿波おどり空港だが、正式名称は徳島飛行場。もともと自衛隊の航空基地で、民間機と併用するようになった現在も設置管理者は防衛大臣)から羽田までは約1時間。何て近い。

 

JR西荻窪駅から少し歩いたところにある「アヒルの空」というビストロで夕食。

初めての店。

ビールのあと、ワインはイタリア・シチリア島の「イル・パッソ ネレッロ・マスカレーゼ」。

料理のメニューを見るとどれもおいしそうで、食欲をそそる。

チョイスしたのは、まずは季節の果物(イチゴとフルーツトマト)と水牛のモッツァレラチーズのカプレーゼ風。

 

クセがすごいグリーンサラダ(春菊、ルッコラパクチー、ハーブ類)。

 

皮つきヤングコーンのロースト。

ヒゲまでおいしい!新発見の味。

 

フェンネル風味のサルシッチャ(ソーセージ)空豆クリームのソース。

 

ホタルイカルッコラスパゲットーニカラスミ風味。

どれもおいしくて、ソースまでなめ尽くす。

若いご夫婦が2人でやっているらしく、お互いがアヒルが好き、空が好きというので店名になったんだとか。

ルンルン気分で帰宅。

(おわり)