善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

きのうのワイン+映画「花よりもなほ」

チリの白ワイン「サンタ・ディグナ・シャルドネ・レゼルヴァ(SANTA DIGNA CHARDONNAY RESERVA)2020」

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生産者のミゲル・トーレス・チリは、スペインのトレースがヨーロッパの技術を導入してチリで手がける造り手。

チリの銘醸地セントラル・ヴァレーでも最も冷涼なリオクラロ地区で造られるブドウを使用したという、爽やかなシャルドネ

 

ワインの友で観たのは民放のBSで放送していた日本映画「花よりもなほ」。

2006年の作品。

監督・是枝裕和、出演・岡田准一宮沢りえ浅野忠信香川照之加瀬亮田畑智子夏川結衣寺島進原田芳雄石橋蓮司ほか。

 

元禄15年、父親の仇討ちのために信州松本から江戸に出てきた若い武士、青木宗右衛門(岡田准一)は、実は剣の腕がまるで駄目。貧しいながら人情あふれる長屋で暮らすうち、彼自身の「弱さ」「優しさ」ゆえに選択したもう一つの道、それは仇討ちをしない人生だった。

そして、たまたま同じ長屋に住んでいた赤穂浪士の中にも、同じ選択をした男がいた・・・。

 

本作は、2001年のアメリ同時多発テロとその後のアメリカの報復から着想を得たといわれる。復讐の連鎖ではなく、許すこと、和解することの大切さを説く、是枝監督らしいメッセージを込めた作品。

しかし、題名の「花よりもなほ」というのは、「忠臣蔵」に登場する江戸城松の廊下で刃傷に及び切腹した浅野内匠頭の辞世の歌、「風さそふ花よりもなほ我はまた春の名残をいかにとやせん」からとられているのか。

だとするとあの歌は、切腹させられて悔しい気持ちを家老の大石内蔵助に伝え、大石らに仇討ちを決意させた歌とされているのだが。

 

また、映画では仇を追ってるはずの主人公が亡き父親の法事のため松本に帰省して、叔父さんかなんかとノンビリ語り合うシーンがあるが、仇を追う身であんなことが許されるのか。

吉村昭の「敵討」という短編小説がある。父の仇を討とうと苦節8年の艱難辛苦の物語だが、仇を討つには藩に「永の暇」を請わなければならず、途中で帰参なんて許されない。めでたく敵討ちができれば帰参も叶うだろうが、それまでは何年かかろうと浪人暮らしを続けなければならない。

吉村昭の作品らしく実話を丹念に調べて作品にしていて、武士にとって仇討ちとは、地位も身分も捨て収入も絶たれた中で、あてもなく仇を探し続けなければならない悲劇であることが浮き彫りにされている。

吉村の作品は幕末が舞台だが、それでも仇討ちとは大変なことだった。ましてや本作は元禄時代が舞台で江戸前期の話だから、武士道精神は健在で封建的な考えにより凝り固まっていただろう。

いくらフィクションです、コメディタッチの映画です、といっても時代考証は肝心であり、多少は現代人にわかるようにするのはいいとしても、登場人物が腕時計をしてたらおかしいように、どうしても譲れないものがある。そこのところをおろそかにするとせっかくのメッセージも説得力を失ってしまうのではと思った。