イタリア・プーリアの赤ワイン「フィキモリ(FICHIMORI)2020」
本日のメイン料理は、トウモロコシとパプリカのミンチボール(トウモロコシのヒゲ入り)。
南イタリア、プーリア州のトップワイナリー、トルマレスカのワイン。暑さが厳しい南イタリアの伝統から生まれた、冷やして美味しい赤ワイン、というので40分ほど冷蔵庫で冷やしてから飲む。ブドウ品種はネグロアマーロとシラーのブレンド。
冷やしたからなのかフルーティーな味わい。
ワインの友で観たのは、民放のBSで放送していたイラン映画「人生タクシー」。
2015年の作品。
ジャファル・パナヒ監督によるドキュメンタリータッチの映画。
彼は、反体制的な活動を理由に政府から映画監督としての活動を禁じらていた。そこでつくったのが本作。
「映画づくりが禁止されているなら、映画じゃないように撮ればいい」というわけで、テヘランの町中をパナヒ監督自らが運転手となってタクシーを走らせ、さまざまな乗客を乗せる。ダッシュボードに置かれた車載カメラには、強盗や教師、海賊版レンタルビデオ業者、交通事故にあった夫婦、映画監督志望の学生、政府から停職処分を受けた弁護士、それに運転手の姪の女の子など、個性豊かな乗客たちが映し出され、それぞれの人生模様が繰り広げられる。
途中から姪として出てきてマシンガントークを繰り広げる女の子はパナヒ監督の実の姪だそうで、おしゃべりだけどとてもかわいくて賢そうなのが印象的だった。
たしかに乗ってくる客を撮っただけだから映画じゃない。だけど登場人物を通してイラン社会の現実を映し出す、これは映画だ。
その前に観たのは民放のBSで放送していた「リラの門」。
1957年の作品。
監督ルネ・クレール、出演ピエール・ブラッスール、ジョルジュ・ブラッサンス、ダニー・カレル、アンリ・ビダルほか。
お人よしの男が殺人犯をかくまったことから巻き起こる騒動を描いた人情喜劇。
パリの下町で暮らすジュジュ(ピエール・ブラッスール)は、仕事もせずに酒に溺れる毎日。ある日、近所に暮らす音楽家の友人(ジョルジュ・ブラッサンス)の家に、警官を殺したピエール(アンリ・ビダル)が逃げ込んでくる。2人はピエールを追い出そうとするが、負傷した彼を放っておけず、かくまうことに。
ところが、ジュジュがひそかに思いを寄せている酒場の娘マリア(ダニー・カレル)がイケメンのピエールに夢中になってしまう・・・。
今回、放送されたのは2019年にルネ・クレール生誕120周年を記念してつくられた4Kデジタルリマスター版。モノクロだけど映像は鮮明で、美しい。
「芸術家」のあだ名で登場するジョルジュ・ブラッサンスはシャンソン歌手として有名な人で、映画でも自作の曲をギター片手に弾き語りで歌っていた。彼が出演した唯一の映画作品という。
題名の「リラの門(Porte des Lilas)」はパリの地名で、19世紀にパリを守るためにつくられた環状城壁に設けられた17の門の1つが「リラの門」。城壁は第一次大戦後に取り壊されたが、今も地下鉄の駅名「ポルト・デ・リラ」として残っている。
まさしくパリのはずれの場末の町という感じで、それで題名となったのだろうか。
話は横道にそれるが、それにしても中世のころまでならいざ知らず、なぜ近代社会の19世紀に入ってもパリは城壁を必要としたのか?
もともとパリの歴史は、セーヌ川の川中島であるシテ島から始まっている。シテとはすなわち「都市」の意味で、シテ島のまわりを城壁で囲んで人々が住み始めたのがパリの始まり。パリはその後、大きくなるにつれて城壁も広げられ、最終的には日本でいえば江戸時代末期の1840年ごろ、パリを取り囲む総延長34キロに及ぶ大城壁がつくられ、リラの門がつくられたのもこのとき。
フランスは広大な平野が延々と続いているような国で、その中にパリがポツンとある。何しろヨーロッパは地続きであり、これまでも外国からの攻撃を何度も受けてきて、1814年には、当時皇帝だったナポレオンがプロイセンとロシアの連合軍により四方からパリを攻められ、ついに退位に追い込まれた。難攻不落のパリにしようと計画されたのが首都を取り巻く城壁だった。
ところが、第一次世界大戦で飛行機が登場。空からの攻撃を受ける時代になって城壁の意味がなくなり、結局、取り壊され、現在は城壁の跡は、片側4車線の大環状道路になっている。
ちなみに日本では江戸時代、城壁は町を守るというよりお城を守るためのものだったようだ。といっても日本の場合、壁というより堀で城を守っていたが、それでも江戸城の場合、江戸城総構えといって、内堀の外側に町家までも含めた江戸の町のかなりの部分を包み込むように外堀をめぐらせた巨大な城郭が築かれていていた。
堀から廓(曲輪)へと続く虎口には封鎖のための門が設けられていて、内堀の桜田門や半蔵門など、外堀の虎ノ門、赤坂門(見附)、小石川門などはその名残だろう。