土曜日朝の善福寺公園は晴れ。快適な朝。
公園に着くなり、草むらにたくさんのバッタが飛んだり跳ねたりしている。まだとてもちっちゃくて、孵化したばかりの赤ちゃんバッタのようだ。
緑色に混じって茶色いのもいる。
頭部が円錐形で斜め上に尖り、その尖った先端に細い触角が2本ある。ショウリョウバッタの赤ちゃんだろうか。
体色は周囲の環境に擬態した緑色が多いが、茶褐色の個体も見られるという。
茶色ばかりだと緑じゃない場所ですぐ見つかって一網打尽になる恐れがあり、保険をかける意味で茶色いのも混ぜる遺伝子のなせるワザだろうか。
池のほとりにはイトトンボ。大きいのと小さいのが飛んでいて、大きいのが止まると、小さい方が「どいてよ」とつっついて追い払っていた。
ちいさいのはいつも見るイトトンボだが、大きいのは黒っぽい色をしていて見慣れないイトトンボだった。
クロイトトンボだろうか?
全身が茶褐色で微小な柔らかい毛が密生しているサシガメ。
カメムシの仲間でオオトビサシガメのようだ。
小さな虫をとらえて鋭い口吻を突き刺し、体液を吸う。
長い口吻は折り畳んでおなかの下に隠されている。
うっかり刺されると激痛が走るという。うひゃー。
ところできのう、公園を散歩していたら、いつも野鳥の写真を撮っている散歩のお仲間の一人から「先日、公園で撮影したカタツムリ、左巻きでしたよ!」と教えていただいた。
そのカタツムリとは、今月始め、アジサイの葉っぱの上にいたもので、よ~く写真を見返してみると、なるほどたしかに貝の渦巻きが左巻きになっている。
カタツムリは巻貝の一種で、ほとんどの個体が背負っている貝は右巻きだが、1万匹に1匹の割合で左巻きのカタツムリが存在しているといわれている。
エー?するとこのカタツムリは1万匹に1匹の、宝くじの当選番号並みのラッキーで見つけたカタツムリ!?
とたんにうれしくなって、以前に撮ったほかのカタツムリと比較してみた。
すると、何と、以前に撮ったのもみんな左巻きではないか!!
交尾してるのも左巻き。
とすると、善福寺公園は1万匹に1匹の珍しいのがウヨウヨ・ゴロゴロしている希少生物のゆりかご、はたまた別天地で、左巻きカタツムリの聖地だったのか!?
しかし、調べて見ると、たしかに世界的に見ればカタツムリの圧倒的多くは右巻きなんだが、日本の関東から東北地方にかけての本州北部と周辺島しょには、左巻きの貝殻を背負った「ヒダリマキマイマイ」という種類が分布していて、比較的目につく機会も多いという。
ということは、左巻きのカタツムリは西日本の人には珍しくても、われわれ東京の人間はけっこう目にしていることになる。
それでも、ヒダリマキマイマイという種類はあるとしても、やっぱりカタツムリの多くは右巻き。それはなぜかというと、巻貝ゆえの“事情”があるようだ。
巻貝というと水中生物を連想するが、陸に上がって肺呼吸するようになった巻貝がカタツムリ(さらに貝殻を失ったのがナメクジ)。
巻貝は形態の非対称性が最も発達した種の1つで、内臓のみならず外部形態である殻も右巻きもしくは左巻きらせんを形成し、体の三軸(頭尾軸、背腹軸、左右軸)すべてにおいて非対称性を有しているという。
右巻きだと、生殖器が出てくる生殖孔も呼吸孔も排泄孔もいずれも体の右側にある。
カタツムリは雌雄同体で単為生殖も可能だが、子孫繁栄のためふつうは他の個体と交尾して精子を交換し、自分の卵子と受精させて卵を産む。
生殖器は右側にあるから、相手と交尾するときは相手も右側に生殖孔を持ってないとうまく交尾できない。この結果、突然変異などで左巻きのカタツムリが生まれても、ほかの個体と交尾ができず、結局は右巻きばかりに片寄る結果となっいてしまったのだろう。
当然、左巻きも左巻き同士でないと繁殖できないから、たまたま左巻き同士が出会い、子孫を残して、ヒダリマキマイマイという種を確立していったに違いない。
それにしても、西は右巻きで、東は左巻きも多いというのがおもしろい。
中国では古来「天子は南面す」とされ、それが伝わって日本でも天子から見て左は東、右が西となり、東は太陽が昇る方角なので陽、西は沈む方角なので陰とされた。
カタツムリもそういう理由で東は左、西は右にと分かれたのだろうか?(むろん冗談ですけど)