善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

アゲハの食草 なぜ“偏食”なのか?

けさ(29日)もサンショウの木にはナミアゲハのサナギがぶらさがっていた。f:id:macchi105:20200829093025j:plain

アゲハチョウの仲間は、それぞれの幼虫が特定の植物のみを食べて成長する。

これを食草というが、たとえばナミアゲハはミカンやサンショウなど柑橘系の植物、キアゲハはセリ、アシタバなどセリ科の植物のみを食べ、それ以外の植物はたとえ餓死してでも食べないという。というか、ほかのものは食べられない、食べても成長できない体の仕組みになっているのだろう。

けさ見たキアゲハの幼虫。アシタバの葉っぱに隠れようにしている。f:id:macchi105:20200829093052j:plain

ウマノスズクサは花を咲かせていた(幼虫は見つからなかったが)。f:id:macchi105:20200829093113j:plain

アゲハに限らず虫たちは決まった食草を持つことが多いが、なぜ虫たちはこんなにしてまで偏食なのか?

その理由は、長い間の進化の過程で、植物とアゲハ(だけでなくほかの動物も含め)との生存のための“知恵比べ”の結果として、“持ちつ持たれつ”の関係が築かれているようだ。

たとえばジャコウアゲハは、成虫も幼虫もいずれも有毒で、食べてもまずい味といわれている。捕食者である鳥は、この「有毒であり、まずい味」を経験すると、二度とジャコウアゲハを食べようとしなくなる。

ジャコウアゲハの毒やまずさはどこにあるかというと、ジャコウアゲハの幼虫の食草であるウマノスズクサの毒やまずさに由来する。

ウマノスズクサにはアリストロキア酸という有毒物質が含まれていて、ウマノスズクサはそれによって捕食者から身を守っている。ところが、長い歴史の間にジャコウアゲハウマノスズクサのアリストロキア酸に耐性を持ち、毒を体内に蓄積できるようになり、この毒は成虫になっても体内に残るようになっている。このため、ジャコウアゲハを食べて中毒を起こした捕食者は以後、ジャコウアゲハを食べなくなる。

つまり、ほかのいろんな植物を食べなくてもウマノスズクサを食べれば自分の実を守れるのであれば、生存にとってより効率的であるのだから、ジャコウアゲハの幼虫はウマノスズクサのみを食べて成長するようになったのである。

 

毒であるアリストロキア酸は、ジャコウアゲハが卵を産むときの産卵刺激物質ともなっている。

幼虫は、自分で食草を探すことはほとんど不可能だ。なにせ少しずつしか移動できないのだから、広い世界のどこに自分の食草があるのかなんてとてもわからない。そこで、翅を持つメスの成虫が空中を飛び回って食草を見つけ、そこに産卵する。

では、どのようにしてさまざまな植物が生い茂っている中から幼虫に適した食草を見つけているかといえば、脚の感触で見つけるのだという。

アゲハに限らずチョウは産卵の前に前脚で葉っぱの表面を叩くドラミングと呼ばれる行動をすることがわかっている。チョウの前脚の先っちょには「味見」をする感覚毛が生えていて、ジャコウアゲハの場合、これでアリストロキア酸を感知し、この植物がウマノスズクサであることをつきとめてそこに産卵するのだという。

 

一方、ナミアゲハはどうかというと、ナミアゲハの産卵刺激物質を追跡した実験によると、産卵刺激を活性化する因子は10種類以上の極めて複雑な化合物群から成り立っていて、その内訳を見ると、フラボノイド、アルカロイドなど、外敵にとっては害であり、植物が身を守るために分泌しているであろう成分が主体となっていたという。

ということはつまり、ナミアゲハジャコウアゲハと同様、ほかの生き物なら嫌うような成分をあえて自分の体内に取り込むことで、柑橘系のミカンとかサンショウなどを独占し、生き残りを図っているのだろう。

 

なんて賢いおかーさんチョウ。やはり、母の愛は永遠だ。