金曜日朝の善福寺公園は快晴。朝からカンカン照りで蒸し暑い。
公園を歩いていると上の方からエナガの声。
見上げるとちょうど真上の枝に止まっていた。
先日見たまだら模様のトンボエダシャクによく似たガらしきものが止まっていた。
翅の白黒のまだら模様、おなかの黄色い帯もそっくりだが、よく見ると、翅の白い部分は白ではなく透明だった。
どうやらカノコガというガらしい。
漢字で書くと「鹿子蛾」。翅は黒地に6個の透明斑があり、それが鹿の子ども背中の模様に似ていると名前ついた。腹部にはくっきりと黄色い帯が2本。
昼行性で花の蜜を吸うが、ハチに擬態しているものと考えられている。
日本には近縁種にキハダカノコがいるが、腹部全体が黄色っぽいという。
そのそばにいたのはカニグモかな。
前脚が長く、それを左右に張った姿がカニに似ているというので名前がついた。
待ち伏せして獲物を捕らえる。
体が金緑色に輝く、脚の長い小さなハエ。タマムシの体色にもちょっと似ているが、アシナガバエの仲間のようだ。
アシナガバエはアシナガバエ科に属する種の総称で、脚が長いのが特徴。
ハエといってもアブに近い。ハエ目ではこうした名前の不一致がときどき見られ、アブなのに見た目だけでハエに分類されるのがけっこういるらしい。
それにしても金属光沢のような輝きが美しい。
アシナガバエにはほかにも、黄色、銀色など金属光沢をもつものが多いという。
タマムシなんかもそうだが、昆虫にはまるで金属のようにキンキラキンに光る体色を持つものが多い。それはなぜか?
昆虫の皮膚は人間なんかとはかなり異なる構造をしていて、皮膚の一番外側をクチクラと呼ばれるタンパク質やキチン質からなる物質で覆っている。これは内骨格の脊椎動物にはないもので、クチクラは外骨格の昆虫にとっての「骨」の役割をしている。
タマムシが玉虫色に光り輝くのは、このクチクラによるものだという。クチクラには表面に微細な凹凸があり、これが光の屈折や反射によって輝いて見えるのだ。このように、色素(色のついた化学物質)によるものではない色、つまり光の屈折や反射によって物理的にできる色を「構造色」というらしい。
光の加減、つまり見る角度によって微妙に色が変わる仕組みで、その役割は美しく見せるためではなく、天敵などに対して目くらましとなるなど身を守るために働いているのではなかろうか(オスだけ美しければ求愛の色といえるかもしれないが)。
じつはクチクラは人間にもあって、髪の毛の表面を覆っている薄い細胞の層をキューティクルというが、これはクチクラと同じだという。このため、光の反射によって髪の毛が美しく輝くことがあり、よくシャンプーメーカーが宣伝で頭頂部付近に髪にできる輝きを「天使の輪」などといってるのも、クチクラ成分の働きによるものだ。
つまりは自ら光沢のある色を発しているというより、光の屈折や反射が色をつくり出しているといった方が正しいのだが、考えてみれば色素がつくり出す色にしたって光が関係している。
リンゴがなぜ赤い色に見えるかといえば、リンゴの表面が赤以外の色を吸収する性質があるためで、リンゴ表面に光が当たると赤い光のみが反射し、私たちの目には「赤い物体」として見える。
しかも、ここでいう「光」とは人間が見ることのできる光、可視光線だ。
可視光線の範囲は生物の種によって異なり、人間が見える光は虹の7色であるのに対して、たとえばチョウは人間に見えない紫外線は見えるがオレンジから赤にかけては見えないといわれている。
とすると、同じ花を見ていても、チョウと人間とではまるで違う色を見ていることになるのかもしれない。
帰り道、お寺の庭の半夏生の葉っぱが白くなっていた。
そういえばもうすぐ夏至だ。