善福寺公園めぐり

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きのうのワイン+映画「チャップリンの殺人狂時代」

チリの赤ワイン「エスクード・ロホ・カルメネール(ESCUDO ROJO CARMENERE)2018」 f:id:macchi105:20200424154602j:plain

ボルドーメドック格付け1 級、シャトー・ムートン・ロスチャイルドを擁するバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社がチリで手がけるワイン。

サンティアゴのおよそ200km南、チリの中心に位置するラペル・ヴァレーのカルメネールを100%使用。

とても飲みやすいワイン。

 

ワインの友で観たのはNHKBSで放送していたアメリカ映画「チャップリンの殺人狂時代」。

 

1947年の作品。

製作・監督・脚本・音楽・主演チャールズ・チャップリン、出演はほかにマーサ・レイ、マリリン・ナッシュほか。

 

原題は「MONSIEUR VERDOUX」。ムッシュ・ヴェルドゥという意味か。

1930年代のフランス。銀行員のアンリ・ヴェルドゥ(チャールズ・チャップリン)は、虫も殺せない男だったが、大恐慌の影響で長年勤めた銀行から解雇され、体の不自由な妻と幼い息子を養うため“殺人狂”に変身。いくつもの名前を騙り裕福な中年の独身女性に言葉巧みに近づいては殺害し、金を奪っていく。

これまでのチャップリンの大爆笑の喜劇とは打って変わったブラック・コメディー。もちろんチャップリンだけに陰惨な殺人シーンはなく、あくまでユーモアに包まれているが。

やがて、フランス各地で相次ぐ女性の失踪に警察は連続殺人事件として捜査を進め、ヴェルドゥに迫っていく・・・。

原案はオーソン・ウェルズというが、単に連続殺人事件を描いた映画ではなく、明確なメッセージを送る反戦映画だった。

ヴェルドゥが裁判で斬首刑を言い渡されたとき、傍聴人に向かって言うセリフがこの映画の主題を明らかにしている。

「私の大量殺人はビジネスだ。戦争だってビジネスじゃないか。1人を殺せば悪人だが、戦争で何百万人も殺せば英雄になるし、数が多いほど殺人を神聖にする。やがて私は死ぬが、すぐにまたみなさんと(あの世で)会えるだろう」

 

この映画がつくられたのは1947年。第二次世界大戦が終わって2年後のことだ。戦勝国となり、やがて“世界の憲兵”として君臨するようになるアメリカに対する強烈な皮肉ともいえるセリフだ。

 

殺人を繰り返すヴェルドゥが心を許したのが、窃盗の罪で服役し、刑務所から出てきたばかりの身寄りのない若い女性(マリリン・ナッシュ)との出会いだった。最初は彼女に毒薬のテストをして殺そうとしたヴェルドゥだったが、病気の夫のために窃盗を働いたと聞いて殺害を思いとどまり、「希望を持て」と諭して一握りの金を渡す。

数年後、ヴェルドゥはその女と再会するが、彼が命を救った彼女は、今や成金の軍需会社社長に見初められて裕福に暮らしていた。それを見て、ヴェルドゥは運命に身を任せることを決意。逃げ続けるのをやめて、警察につかまってしまうのだった。

どん底から、希望を捨てずに生きた彼女の人生が、ヴェルドゥに正気を取り戻させたのだろうか。あるいは、戦争の被害者のはずの女が軍需会社の社長になびいた知って生きるのがアホらしくなったのか。