善福寺公園めぐり

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2100年の世界地図 22世紀はアフリカの時代?

峯陽一「2100年の世界地図 アフラシアの時代」(岩波新書)を読む。

 

著者の峯陽一氏は同志社大学教授で、もともとはアフリカ地域研究が専門という。

「アフラシア」とは、ヨーロッパとアジアを包括してユーラシアというが如く、アフリカとアジアという意味。

なかなか示唆に飛んだ本だが、地理情報システム(GIS)の手法を駆使して人口分布などの地球規模の情報を多彩なカラー地図で示しており、80年後の2100年を未来予測している。

 

それによれば世界の人口は2100年までに100億人を超え、アフラシア、すなわちアフリカ・アジアの人口は世界人口の8割以上を占めるようになるという。

中でも人口が増えるのはアフリカだ。

アジアの人口増加は21世紀後半には頭打ちになるのに対して、21世紀のアフリカの人口増加は右肩上がりだと想定される。

たとえば、世界1位と2位の中国とインドは、中国は2030年ごろを境に、中国を逆転して1位に躍り出るインドも2060年ごろを境に減少していくのに、アフリカの人口は増え続け、特に人口増加が著しいのはナイジェリアであり、2001年の人口が約12500万人で同年の日本の人口とほぼ同じだったが、2100年にはおよそ8億人に達するとされている。

22世紀はアフリカの時代か。

 

読んでいて「へーっ」と思う箇所もあった。

アフリカというと貧困がクローズアップされるが、確かにその問題は重要で国際的支援が求められているのは確かだが、同時にこんなデータもあるという。

世界の人々が消費する食品を2010年の187カ国のデータに基づいて調査し、栄養学的に健康的な10品目(豆類、魚、ミルク、野菜、果物など)を多く消費している国々を並べたところ、上位10カ国にセイシェルモーリシャス、チャド、中央アフリカ、マリ、カボベルデという6カ国が入った。

一方、非健康的な7品目(赤身肉、加工肉、砂糖飲料、脂肪など)を少なく消費している国の上位10位には、ブルンジルワンダマラウイエリトリアエチオピアソマリアシエラレオネというアフリカ7カ国が入ったという。

 

つまり、アフリカでは、貧しいけれども、いや貧しいからこそなのかもしれないが、食生活の点では健康的な毎日を送っている人々がけっこう多いというのだ。

 

これについて本書はこう書いている。

「もちろんその中には全般的な低栄養が想定されている国もいくつか含まれているが、すべての国がそうではない。すべての国の人々の未来の食生活が、アフリカにおけるような、より健康的なタイプの食生活に移行する可能性も考えてよいだろう。アフリカに見られるのは開発の失敗だけではない。そこには、同時代の地球規模の課題を解決するヒントがあるかもしれない」

 

ちなみに本書で紹介された栄養についての調査というのは、英国ケンブリッジ大学代謝科学研究所の疫学部門の今村文昭博士らの研究グループが、世界187カ国450万人の食事調査から各国の食事の健康度をスコア化し国別に採点したもの。

健康的な10品目のスコアでは、ベスト10ギリシャ、トルコなどの地中海沿岸諸国とともにアフリカ諸国が半数以上の6カ国も入っている一方、日本は187カ国中、真ん中当たりの90番目だった。

また、非健康的な7品目のスコアでは日本は187カ国中の118番目。このスコアは「不健康食品の消費量が低い」と高スコアになるから、点数が少なくて118番目になったということは「不健康食品の消費量が多い」ことを示す。

 

「豊かさっていったい何なの?」と考えさせられる。