春の底磔(はりつけ)のまま漂流す
流されて流れ着かざる春の海
大切のしら骨のもう海のもの
埴輪(はにわ)より暗き瞳や春の月
ふきのたう賽(さい)の河原の泥童(わらは)
春の泥しづかにまなこ見開かる
震災五年時は薬よ毒入りの
三月の針ばらばらに指されをり
堰(せ)き止めてわたくしは湖(うみ)哀しみの
救へざりしいのちの光犬ふぐり
雛まつり遺影外され伏せらるる
春の星乳の滲(にじ)みのありにけり
釜石は大いなる渦鳥帰る
手も足もなき三月の闇の底
三・一一みちのく今も穢土(えど)辺土