19世紀中ごろ、マンネリ化していたロイヤル・アカデミーに反旗を翻し、イギリスの若い画家たちが新しい絵画の運動を始めた。
当時、アカデミーはルネサンスの巨匠ラファエルの絵画を模範としていた。しかし、若い画家たちはラファエルの絵を劇的すぎてわざとらしいものととらえ、絵画をもっと崇高な道徳的なもの、ラファエル以前の素朴なものに回帰させようとした。これがファエル前派だ。
当時、アカデミーはルネサンスの巨匠ラファエルの絵画を模範としていた。しかし、若い画家たちはラファエルの絵を劇的すぎてわざとらしいものととらえ、絵画をもっと崇高な道徳的なもの、ラファエル以前の素朴なものに回帰させようとした。これがファエル前派だ。
ラファエル前派の作品で有名なのはジョン・エヴァレット・ミレーの『オフィーリア』だろう(シェークスピアの『ハムレット』を題材にしたもの)が、今回は出品されていない(同作品はロンドンにあるテート・ブリテン所蔵)。
今回の出品作は全部で65点あり、どの作品も緻密で、宗教的な意味合いが強いが、官能的なものも多くあり、描かれている人々の顔立ちはまるで19世紀当時のイギリス人そっくり。神話の世界と現代(つまりは19世紀当時)とが巧みに融合されている感じがした。
しかし、会場をずっと見てまわっていっていちばん引きつけられたのは19世紀後半の象徴主義者たちの作品、中でもジョージ・フレデリック・ワッツの『十字架下のマグダラのマリア』『これこそ、女と呼ぼう』『《希望》のためのスケッチ』『愛と生』などの作品だった。
いずれも寓意的な作品だが、抽象的表現と色彩がすばらしく、しばし絵の前から動けなかった。