善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

イアン・ランキン 他人の墓の中に立ち

なでしこ、準決勝でイングランドに2対1で勝つ。
あんな決まり方があるものかと驚く勝利。川澄選手の長めのパスからのオウンゴールだった。そういえば4年前の準決勝でも2得点をあげたのが川澄選手。特に2点目は意表をつく超ロングシュートだった。
やっぱり何か“持ってる”ものがあるのかもしれない。

たまたまというか、イングランドの北のスコットランドが舞台のイアン・ランキン『他人の墓の中に立ち』(ハヤカワ・ポケットミステリ)を読了。
何気なく手にしたら、おもしろくてイッキ読み。

もともとスコットランドエジンバラの場末の警察署のリーバス警部が主人公のシリーズものだったらしいが、リーバス警部はシリーズ18作目で定年退職。それから5年、民間人となったリーバスが「手伝い」として捜査に復帰するという話。

現役時代も一匹狼で、自分の経験とカンを頼りに“独走型”の捜査に熱中する捜査員だったらしい。
退職して、“補助捜査員”となって復帰すると、昔のような権限は何もなく、上司からは疎まれ、管轄外の警察署に行けば、ただの民間人としてしか扱われず、いくら重要な手がかりをつかんでもまるで取り合ってくれない。
こうなると一匹狼どころか、おいぼれのはぐれ元刑事という感じで、孤高のたたかいをするしかない。

それでもめげずに、地道に事件と向き合うところが今回の主人公の魅力。話のスジより、リーバス元警部の人柄がじつによく描かれていて、共感するところが多かった。
みんなから疎まれ、無視されても(もちろん中には協力してくれる人もいて、それが救いだが)、そこまでしてなぜに彼は捜査の手をゆるめないのか。
それは、ひとえに犯罪は許せないという思いからだろう。
犯罪とは、人間としての尊厳を否定する行為。態度はふてぶてしいが心優しいリーバスには、それが何としても許せないからに違いない。

本書を読んでもう1つ、あらためて発見したこと。
海外ミステリーはボケ予防にいい。
何しろ登場人物の名前が覚えられない。そのたんびに巻頭の「主な登場人物」と首っ引きとなるが、そこにも出てない名前があって困ってしまう。でも、いつもと違う脳の部分を働かせているみたいで、なかなか新鮮だった。
主人公は音楽、中でもロックが好きらしく、ミュージシャンの名前がたくさん出てきたが、ロックファンだったらもっとおもしろく読めただろう。

それに今回は地名がたくさん出てくる。
スコットランドのA9号線という道路沿いで連続して発生した女性失踪事件がテーマで、道路沿いの地名が次々と出てくるので、グーグルマップで確かめながら呼んでいくと、臨場感満点でグー。

物語の舞台はネッシーで有名なネス湖周辺なんだけど、本書では「ネス湖」も「ネッシー」もまるで出てこない。地元ではもう過去の話なんだろうか。