善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

師弟の競演 幻想の世界 2月文楽公演

きのう(19日)は国立劇場の2月文楽公演。

今年最初の文楽。1月は大阪で公演だから、東京での初春公演は2月となる。
文楽は本家本元の大阪市当局からは補助金削減などでイジメられている。それならいっそ東京に越してきたら、といいたくもなるが、発祥の地・大阪を大事にしてこその文楽なのだろう。われわれは2番目に甘んじるとしよう。

今回観たのは第3部の「御所桜堀川夜討(ごしょざくらほりかわようち)」弁慶上使の段と、「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」十種香の段、奥庭狐火の段。

客席は満員。夜の部だったからか、意外と若い人、それも女性の若い人が多い感じがした。

すばらしかったのは「本朝廿四孝」。
義太夫は嶋大夫に呂勢大夫、三味線は富助、清治、清志郎、琴が清公。
人形遣いは花作り蓑作(実は武田勝頼)に玉女、腰元濡衣に文雀、そして八重垣姫を前半が簑助、後半が勘十郎と師弟の競演(ナント粋な演出!)。

特に大活躍だったのが後半の「奥庭狐火」の勘十郎。
幻想的な舞台の上に、いろんな仕掛けがあって見る者を楽しませてくれる。
まずは狐があらわれて、狐を遣う勘十郎も狐っぽい衣装。
パッと狐が消えたかと思うと、途端に八重垣姫の勘十郎。ドッと拍手が湧く。歌舞伎の早替わりはよく見るが、文楽の、それも人形遣いの早替わりをはじめて見た。

八重垣姫を遣う勘十郎の衣装は(これは簑助も同じだが)、ねずみ色の着物に袴は紫色というかエンジっぽい色がまたステキ。

同じ八重垣姫を、簑助と弟子の勘十郎が演じ分けるのを見る幸せ。
一瞬、勘十郎は師匠を超えたのでは?とも思ったが、それは目の錯覚だろう。

たった一言だが、勘十郎が「タッ!」と声を発する。文楽の舞台で人形遣いの声をあれほどはっきり聞いたのも初めてのこと。

三味線の清治がまたすばらしい。指で糸をこするだけで、あれだけの情感。

最後の方でいつもは黒子に徹して頭巾をかぶっている左遣い、足遣いも頭巾を脱いで袴姿となり、八重垣姫を遣う左遣いは一輔、足遣いは勘十郎の息子の蓑次だった。