善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

「トロールの森2013」近づく

11月3日(日)から23日(土・祝)まで、都立善福寺公園で野外アート展「トロールの森2013 まちと森をつなぐかたち」が開催される。

野外展示の作品だけでなく、芝居やダンス、遊吟詩人の歌なんかもあり、主に同公園の上池周辺が中心だが、近くの杉並区立桃井第四小学校や、JR西荻窪駅界隈でもさまざまなイベントが行われる。

2002年に始まって今年が第12回。今回は「森の幸福論」をテーマに26組のアーティストが参加し、森の命の輝きが伝わってくるようなアート作品とパフォーマンスを展開しようと張り切って準備中。

新しい試みとしては、「まちへ飛び出すトロールたち」と銘打ち、開幕前日の11月2日と10日に西荻駅前から公園までを練り歩く「トロールわいわいパレード」を催したり、11月5日からは西荻窪駅近くのカフェでパフォーマンス部門の写真展も開く予定。

私が所属する街のミニラジオ局「ラジオぱちぱち」は、公園内にコーヒー、紅茶(ケーキ付き)の青空カフェをオープンする一方、パフォーマンス部門でラジオドラマ「黄金バット」の実演版「黄金バット第80作 大ナゾー魔術団とバット・マジックショーの対決の巻」を上演予定で、ただいまケイコに余念がない。

内容は見てのお楽しみなのだが、下敷きとしてあるのは古代インドで成立した長編叙事詩「ラーマヤナ」の物語。
世界三大叙事詩というのがあって、1つがこの「ラーマヤナ」、そしてフィンランドの「カレワラ」、ギリシャの「イリアス」といわれるが(ほかにも諸説あり)、「カレワラ」をモチーフにした芝居は2年前に「黄金バット第72作 怪タンク復活の巻」でやっている。

「ラーマヤナ」ができたのは2世紀末といわれる。若き英雄ラーマには美しい妻シータがいた。ところがシータは魔王にだまされて誘拐されてしまう。妻を探して旅に出たラーマは、ついに猿の勇者らと力を合わせての戦いの末に魔王を倒し、無事、妻を救い出す。
ホントはもっといろんな話が織りまぜてあって、サンスクリット語で書かれた物語は4万8000行にも及ぶという。
インドネシアのバリ島で(あるいはその後に東京でかもしれないが)ワヤンクリ(人形を使った影絵)を見たときにやっていたのが「ラーマヤナ」で、戦いの場面がものすごく迫力があったのを覚えている(しかもそれをダランという、たった1人の人形遣いが操作するのだからスゴイ)。

黄金バットでは、英雄ラーマは正義の味方・黄金バットで、さらわれたシータはジェット光線の平和利用の研究をしている篠原博士の娘・マサエ。そして魔王は、ジェット光線を奪って世界征服しようと企む悪の科学者・ナゾー。

縦糸を貫くのは、悪は滅び、正義は勝つの「永遠のマンネリズム」。
だからマサエは何年たっても17歳のままで、「ジェット光線の秘密を教えろ」と脅すナゾーに対して、「私は許しません、ゼーッタイに許しません」の同じセリフを80作、12年間にわたって言い続けている。マサエ役の女性は、日ごろ夫婦ゲンカしてもこのセリフがつい口をついてしまうほどだとか?(これはウソ)

これに対して、横糸となるエピソードがいろいろあって、冒頭はカッパによる「かどわかし」。
善福寺池には昔カッパがいたという伝説があり(この話は去年のトロールの森でやった)、今回登場するのはニセカッパ。

「かどわかし」とは「誘拐」のことだが、「カド(門)をマヨワシ(迷)て他所にいざなう」の意味もあるという。いざなう役であるカッパは、いわば異界からの使いである。
自然と人の暮らしとの間にはわずかな隙間があり、人はヒョンなことからそこに迷い込み、異界へと誘われていく。
(「となりのトトロ」でメイがトトロの棲む森の中にさまようように、あるいは逢魔が時とは日が暮れて闇夜が訪れようとする、ぼうっとして人の顔の判別も難しくなるような「誰そ?彼」のたそがれ時のことだが、そんなとき魑魅魍魎と出会いやすいのだとか)。
マサエの失踪は異界への旅立ちでもある。

続いてはバットの旅。
ラーマーヤナ」でも妻を助けるため勇者は長い旅に出る。日本の桃太郎伝説でも、イヌ、サル、キジを連れて旅に出る。冒険に旅は欠かせない。

もう1つ重要なのがイリュージョン。といっても、そう称しているだけで、ちょっとした手品もどき、といおうか、今回登場するのは「巨大ザメに食べられる美女」と「美女の胴体真っ二つ」。
なぜかもう10何年も前から「見世物小屋」と称したパフォーマンスに執着していて、「ろくろっ首」とか「一つ目小僧」「体長2メートルの大イタチ」「ヘビ女」「多摩川で生け捕ったアゴヒゲアザラシのタマちゃん」などを登場させたり、「スネークショー」「空中浮遊」など怪しげなことをいろいろやってきた。
ヘタな素人がヘタなマジックや演芸に挑戦するのは、見る側にとってはバカバカしいのひとことなのかもしれないが、ここまで何年もやっていると、もう、それを極めるしかない。

最後は立ち回り。つまり戦闘シーンだ。
といって日本人だから(?)戦闘シーンはやっぱりチャンバラ。
合わせる曲はチャンバラシーンの定番曲「千鳥の合方」。
殺陣の定番に「千鳥」というのがある(左右から斜め、斜めに斬りかかっていく形で、飛び千鳥というのもある)。それに合わせるから「千鳥の合方」というかどうかはわからないが。
殺陣の語源は諸説あって、「大勢で太刀(たち)で斬り合う」から「たち」となったとか、歌舞伎の「立ち回り」の「立ち」からきているとかいろいろいわれるが、舞台となるとやっぱり歌舞伎の「立ち回り」がふさわしいだろう。その「立ち回り」という言葉ももともとは「立ち居振る舞い」からきていて、美しい「形」こそが大事だという。
果たして本番は?

黄金バットの上演は、11月3日(日)10時30分、同15時、17日(日)10時30分、同12時、同15時、23日(土・祝)10時30分、同15時。上演時間約20分。