善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日

きのうの日曜日は1日中快晴。

善福寺公園では「もうすぐ春ですよ」とでもいうように、花芽が日1日とふくらみを増している。
こちらはボケ。
イメージ 1

コブシの花。
イメージ 2

沈丁花
イメージ 3


きのうはTジョイ・大泉で『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』を観る。
朝イチだったためか、席はガラガラ。ゆったりと観る。
3D作品。リアルとファンタジー、冒険と寓意が融合していてなかなかおもしろかった。

インド人の青年というか16歳の少年の物語。
インドで動物園を経営していた一家が、新天地を求めて動物とともにカナダに移住を決め、貨物船で太平洋を北上するが、海難事故に遭い、息子の16歳の少年パイが人間では唯一の生存者となる。彼はライフボートでオランウータン、ハイエナ、シマウマ、ベンガルトラと過ごすことになる
リチャード・パーカーという名前のトラは、ほか動物を食べつくすと、パイを狙い始める。

物語の前半にいくつもの伏線がちりばめられ、それが後半に生きてきて、なるほどと思わせる。

たとえばパイの本当の名前は「ピシン(Piscine)」という。フランス語で「プール」を意味していて、プールの水の美しさに由来して名づけられたというが、英語の「オシッコする」の「Pissing」と似ているため、学校でいじめにあう。そこでピシンはクラスが変わった最初の授業の自己紹介で「ピシンは円周率のパイから付けられた名前なのでパイと呼んでください!」と先手を打つ。このように、前向きで機知に富むパイゆえにこそ、その後の冒険を生き抜くことができたと暗示する。

物語の途中でパイとトラは、無数のミーアキャットが生息する不思議な島に漂着する。そこにハスの花のような植物を手にし、花が開いていくと別の世界が広がっていくのだが、そこには2つの伏線がある。

1つは、パイが子どものころに聞いた神話で、クリシュナ神(だったか)の口の中に宇宙が広がっているという話。
もう1つは、パイはインド舞踊を習う少女(この子がとても美しい!)少女と出会い恋に落ちるのだが、パイは少女にこう聞く。
「今日のダンスのレッスンで、あなただけハスの花のポーズをしていましたね。あれはどんな意味ですか?」と聞く。
何て答えたかは忘れたが、仏教やヒンズー教ではハスの花は世俗にまみれない清らかさを意味していて、仏教ではよい行いをした人は極楽浄土でハスの花の上に生まれ変わることができるとなっていて、『男はつらいよ』の歌にも「どぶに落ちても根のある奴はいつかはハチスの花と咲く」とある。

ところが、ミーアキャットの島で手にした花の中にあったのは、全宇宙でも極楽浄土でもなく、人間の歯のかけらだった。
なんとその島は、島そのものが肉食の島で、美しいと思った沼は夜になると酸性になり、生きものを溶かして島の養分にしてしまう。極楽どころか恐ろしい島だった。

映画の結末も、とても考えさせられるらもので、ある意味、哲学的な映画だなと思った。

全編を貫くものは、自然に対する敬意、そして恐れ。作者はあるいは、自然を「神」ともとらえているかもしれないが、あの結末は、人間の意思なんてちっぽけなもので、ホントもウソも、結局は自然の一部にすぎないのだよ、と説いているように思える。

絶望の中でも、常に前向きでいることの大切さを教えてくれる映画でもあった。