善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

小三治の「甲府ぃ」

日曜日の21日夜は国立演芸場で「芸術祭寄席」。

平成24年度(第67回記念)文化庁芸術祭主催特別企画公演と銘打ってある。出演者はいずれもかつて芸術祭の賞を受賞した芸人ばかり(1人だけ受賞歴はないが落語協会幹部というのがいた)。

昼の部は落語芸術協会所属の芸人が出演し、トリは会長の歌丸。夜の部は落語協会所属の芸人で、トリはやはり会長の小三治。それで今回は夜の部に行った次第。

演目は次の通り。

落語 春風亭一之輔「普段の袴」
落語 柳家はん治「鯛」
漫才 ロケット団
落語 柳亭市馬「首提灯」

仲入り

落語 五街道雲助「辰巳の辻占」
ものまね 江戸家猫八
落語 柳家小三治甲府ぃ」
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先日の「リチャード三世」は若い女性の客が圧倒的に多かったが、きょうはさすがに中高年ばかり。
大いに笑わせてもらった。

一之輔は今、のぼり調子の若手。21人抜き昇進で真打ちになったかとかで話題になった。まだ30代前半。若いというのはいい。噺はまだまだでも勢いがある。聴いていて好感が持てた。

はん治の「鯛」は新作落語桂三枝(今年、6代目の桂文枝を襲名)の作だという。
海で人間に捕まえられて料理屋のいけすに入れられた鯛の噺。新米の魚に、このいけすで20年も生き長らえている「ぎんぎろう」(だったか)が、生き延びるコツを教えるという噺。
なるほど、三枝らしい噺。はん治もなかなか味のある語り口。小三治の弟子という。

ロケット団は、ファンではないがテレビでもてはやされる大阪・吉本に負けるなと応援している東京漫才のコンビ。これからもガンバレ~。

市馬の「首提灯」。正蔵(のちの彦六)の「首提灯」が絶品だった。まくらも正蔵そのままで、特に胴体を切られた上半身と下半身が、それぞれ風呂屋の番台とコンニャク屋の足踏みに働きに出るくだりが、実にナンセンスでおもしろい。
田舎侍に首をちょん切られ、切られたのを知らずに品川へと繰り出す江戸っ子。歩きながら首がだんだんずれていくところが、なかなか難しい。市馬は少し首が太すぎてか、リアルさに欠けたのがちょっと残念(正蔵のはホントに首がずれていってた)。落語は話芸だけでなく、動きも重要なんだね。

雲助の「辰巳の辻占」のあとは猫八のものまね。テレビではよく見るが、生で聴いたのは実は初めて。すごく響く音量で、やっぱり生でこその迫力。よかった。

最後は小三治の「甲府ぃ」
出てきた姿を見て、ますます老成してきたなと思ったが、声は若い。まだまだ大丈夫だ。
まくらはごくあっさりと。
ただ、秋の季語「銀杏落葉」の話になっていきなりフランク永井の「公園の手品師」とかいうのを歌い出した。

鳩が飛び立つ公園の
銀杏は手品師 老いたピエロ
薄れ日に微笑みながら 季節の歌を・・・

フランク永井の歌にこんなのがあるとは知らなかったが、なるほど手品師とは銀杏のことで、銀杏の歌だ。
途中まで歌って、「ま、このへんでいいでしょう」とやめて、おもむろに始まったのが「甲府ぃ」。
じっくり聴かせて泣かせる噺。いつも思うが、オチが傑出している。

豆腐屋の若夫婦が身延山にお礼参りに出かけようとする。その店の売り声、「豆腐ぃ、ごま入りがんもどき」にひっかけて、

「もし、善吉さん、ご夫婦連れでどちらへ?」
甲府ぃ、お参り、願ほどき・・・」

[観劇データ]
芸術祭寄席
2012年10月21日 午後6時開演(終演午後9時すぎ)
東京・国立演芸場
3列5番