善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

井上雄彦 リアル

井上雄彦のコミック『リアル』を読んでいる。

1999年からマンガ雑誌不定期で連載されているらしくて、単行本は11巻までが出ている。マンガ雑誌を読む習慣はないが、たまたま『リアル』をまとめて読むチャンスがあり、本日までのところ9巻までを一気に読んだ。

車椅子バスケットボールをめぐる若者たちの物語。ストーリーはというと──。
高校のバスケ部員だったが、学校を中退して、バイクを運転中にうしろに乗せた女性に大ケガを追わせてしまい、自責の念に苦しむ野宮朋美。いかつい顔だがホントは心優しいキャラ。
車椅子バスケの有力選手で、日本代表へのさそいを受けながらも、我が強く、チームメイトとうまくいかない戸川清春
かつては野宮と同じ高校のバスケ部員で、チームではキャプテンで成績も優秀、イケメンで女の子にももてたが、人をランクづけするほど自尊心が強く、交通事故で下半身不随になったことで自分を見失っている高橋久信
3人の若者がREAL(現実)と向き合いながら、夢を追いかけていく。

1日1冊と決めて読んでいったが、いつも最後に泣かせるシーンがあって、ついホロリとしてしまう。

物語で描かれる車椅子バスケ障害者スポーツの1つだが、車椅子を使うこと以外は、コートの広さ、ボール、リングの高さなど、その条件は普通のバスケットボールと何ら変わらないという。むしろ、健常者のバスケ以上にハードで高度なワザが求められ、スポーツとしての魅力も勝るとも劣らない、かもしれない(実際に見たことがないので・・・)。

印象に残るシーンがあった。
健常者向けバスケ雑誌の編集部にいた編集者が、車椅子バスケの雑誌編集部に異動になった。取材に行く途中、同行する女性カメラマンに嘆く。
「俺の編集者生命もこれで終りだよ。せっかく雑誌の力で日本のバスケをメジャーにしようとがんばってきたのに、よりによって障害者スポーツの雑誌に異動になるとは・・・」
ところが、カメラマンのひとことに“ガガーン”となる。
「雑誌の力で車椅子バスケをメジャーにしましょうよ!」

『リアル』の主題はもちろん「青春」だが、もう1つ、ここにあると思った。つまり、スポーツとしての車椅子バスケの魅力、凄さ、すばらしさの発見である。

今のところまだ3人の若者は、野宮と戸川、野宮と高橋の出会いはあるが3人の完全な出会いはない。
ということはまだ物語は序章にすぎないのだろう。
続刊が待たれる。