善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

ロードサイド・クロス

金曜日朝の善福寺公園は曇り。日がかげっているので木々の下を通るときはすごしやすい。しかし、帰るころには夏の暑さ。

けさのラジオ体操は大震災の被災地、岩手県普代村からの中継。しかし、ここでは過去の津波では多数の犠牲者を出したものの、今回は死者ゼロ、行方不明者1人にとどまったという。
被害を食い止めたのは、高さ15・5メートルもの水門と防潮堤で、昭和40~50年代に、当時の村長が反対の声を押し切って建設にこぎつけたものなのだとか。
やはりいつの時代にもヒーローが必要なのか。

下池に、ジャンプしたままの格好で死んでいるカエルを見つける。自然の大切なバロメーターであるカエルを殺したのは何者? あるいは自然死か?

帰る途中、かわいい花を発見。
イメージ 1

ふと見上げると、電線にツタ様の植物がからまっている。このところ雨が降らないので、だいぶ干からびてきている。
イメージ 2

ジェフリー・ディーヴァー『ロードサイド・クロス』(文藝春秋)を読む。去年の本だが、暮れに図書館に予約して半年以上たってようやく順番がきた。

宣伝文によると──。
尋問の天才キャサリン・ダンス(カリフォルニア州捜査局捜査官)、ネットにひそむ悪意に挑む。陰湿なネットいじめに加担した少女たちが次々に命を狙われた。いじめの被害者だった少年は姿を消した。“人間嘘発見器”ダンスが少年の行方を追う一方、犯行はエスカレート、ついに死者が出る。犯人は姿を消した少年なのか?だが関係者たちは何か秘密を隠している―。幾重にもめぐらされた欺瞞と嘘を見破りながら、ダンスは少しずつ真相に迫ってゆく。完全犯罪の驚愕すべき全貌へと。

読み終わって、前作の『ウオッチメイカー』のような戦慄は覚えなかったが、それなりにおもしろかった。ミステリー+家族小説として。
今回の主人公は、前作の『ウオッチメイカー』にも登場した尋問とキネクシスの専門家であるキャサリン・ダンス。

キネクシスとは「動作学」と訳されていて、証人や容疑者のボディランゲージや言葉遣いを観察し、分析することだそうだ。まず相手に名前とか住所とか、本当のこととわかることを答えさせ、そのときの身振りや言葉のいいまわしなどを観察する。それをベースにして、次々と質問を繰り返し、相手の表情や身振りからホントとウソを見抜いていく。
アメリカでは、キネクシスの活躍の場が犯罪捜査の中で少しずつ広がっているのだそうだ。

犯罪捜査の手法にプロファイリングというのがあったが、これは、現場に残された物証や状況をもとに統計学的なデータと心理学の両面から犯人像を推理し、人種・年齢・生活態度などを特定していくもので、アメリカのFBIが取り入れていて、日本でも、世田谷一家惨殺事件などで試みられている。
キネクシスは、より心理学的側面の強い捜査手法といえよう。

今回の主人公のダンスは、『ウオッチメイカー』の主人公であるリンカーン・ライムが冷静に物的証拠を収集・分析して鮮やかに推理を展開していくのと比べると、こっちの方が冷徹にみえて意外と人間的。もう1つの話の筋に、ダンスの子どものことや母親、それに彼女をめぐる男の話も絡んでくる(ちなみにダンスは亭主を事故で亡くしているので独身)し、鋭い分析力を持っている割には捜査にミスも多い。それでもちゃんと事件が解決するのは小説ゆえ。

むしろ最後のほうは、家族とのきずなや、ダンスと同僚刑事、コンピュータに詳しい大学教授との恋?がどうなるのか、ということのほうに興味が行ってしまう。
何しろ小説には不倫とか離婚の話がポンポン出てくる。
それと、親たちの勝手な行動にもめげない小さな子どもたちの姿がいきいきと描かれていて、好感が持てた。