善福寺公園めぐり

善福寺公園を散歩しての発見や、旅や観劇、ワインの話など

希望の光の酒 日高見

日曜日に吉祥寺・ハモニカ横丁で開催された「ハモニカ朝市」で買ってきた「日高見」(特本・本醸造)を飲む。キリリとしてなかなかいい酒だ。
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ラベルを見ると「製造年月23年06月」とある。「日高見」の醸造元は宮城県石巻市にある平孝酒造。大震災によって壊滅的な被害に遭った酒蔵だ。23年6月というと震災後に瓶詰めされた酒ということになる。

この酒蔵では、発酵中の酒がことごとく被害に遭った。震災直後、仕込み蔵は地震の揺れの激しさから発酵中のもろみがタンクから溢れ、床一面にあふれ出たという。

建物がいたるところで壊れ、立ち入ることも困難になり、同時にライフラインが寸断されて発酵中の酒の管理もできなくなっしまった。
酒造りは米造りと同じで年に1度、冬の間に行われ、3月といえば大詰めの時期だ。酒は微生物の力で醸し出されるから、この時期、酒は生きている。その生きている酒が被害に遭えばどうなるのか。

ただ呆然と指をくわえて見守る日々が続き、電気など一部ライフラインが復旧したのは震災から二週間目のこと。酒造りを再開したところ、奇跡が起こっていた。酒はしっかりと生命力を宿らせていたのだ。

大震災に耐え、希望の光となった酒、それが「日高見」。

「日高見」という名前は、『日本書紀』に登場する「日高見国」に由来する。同書には、石巻市のあたりに太陽の恵みを受ける「日高見国」があると記されているという。ということは「日高見」はすでに神代の時代から、朝の光のような希望の輝きを放っていたということか。

次回の「ハモニカ朝市」は7月31日の日曜日(時間はたしか朝7時から10時)。「日高見」を呑みたくなったら朝市に行こう。

(ところできのうの本コラムで、缶詰のラベルは支援の人たちが手書きしたと書いたが、実際は避難所にいる被災した人びとが書いたのだという。かえって勇気づけられた)